NARUSE'S:BLOG

ハイロイン/上癮:Addictedの原作小説を和訳している男子大学生でした

第138章:突然の訪問

家の外でリーシュオとチョウスーフーが待っている。

”一体どっちがドアを開けに行くのか?”

バイロインはグーハイのことを見る。グーハイはバイロインのことを見る。しかし二人は全く動こうとしない。

バイロインは患部に薬を塗り終えたばかりでまだズボンすら履いていない。グーハイはグーハイで肛門を怪我をしており、歩けば拷問を受けているかのような痛みが走ることになる。

何度か無言のやり取りをした結果、グーハイが歯を食いしばりながら立ち上がる。

「行ってくる」

しかしそんなグーハイをバイロインが引き留める。

「いや俺が行く。お前は横になっててくれ。動かないほうがいいだろ」

「お前な、わざと俺の惨めな姿をあいつらに見せて笑い者にするつもりなんだろ?」

グーハイは眉間に皺を寄せて、目つきは警戒に満ちていた。

バイロインは仕方ないだろという様子で話す。

「いいか、今の俺たちは”運命共同体”だ。もしあいつらに本当のことを話したらまさか勝手にドアを開けて入ってこれるとでも思ってるのか?お前も自分のその怪我のことをちゃんと考えろよな!」

「この野郎……」

そう言いながらグーハイは憎らし気にうつ伏せの姿でベッドに横になり、布団で自分を”武装”した。

バイロインは腰を支えながら苦痛に耐えるような表情で玄関に向かって一歩ずつゆっくりと進む。玄関のドアの前に着くと一度深呼吸をして背筋をピンと伸ばし、リラックスした表情を作ってからドアを開ける。

「おぉ、来たのか?」

バイロインが穏やかな表情で出迎える。チョウスーフーはまさかバイロインが出てくるとは思わず驚いてバイロインの肩をさっと叩く。

「ハハハ…インズ、戻ったのか?」

この”攻撃”を受けたバイロインはもう少しで地面にたたき落とされるところだった。

隣のリーシュオはとても不思議がっている。この間まで、あの”グー大少”がバイロインの話題は出すなと注意していたのに、どうしてのこんなにも早くまた同じところに住んでいるのか理解が出来なかった。

「なぁ、ダーハイは?」リーシュオが尋ねた。

バイロインはかろうじて笑顔を作る。

「寝室だよ」

「まだ寝てるんじゃないか?」

二人はそう言いながら家の中に入り、寝室に向かう。バイロインは目立たないようにわざと二人の後ろに隠れ、彼らがバイロインから目を離した瞬間に、すぐ腰を曲げて歯を食いしばってずっと我慢していた激痛に顔を歪める。

途中、突然スーフーたちが振り向く。咄嗟にバイロインはすぐに腰をぴんと真っすぐ伸ばして何も問題の無いフリをする。

「ダーハイのやつ、怠け者だな。まだ起きないのかぁ?何時だと思ってるんだよ?」

寝室に入ったリーシュオがそう冗談を言いながらグーハイのお尻をいきなりポンと叩いた。

その瞬間布団の中に潜っているグーハイの首から青い筋が浮かび上がり、呼吸が大きく乱れる。幸いにも布団を被っていたため大惨事に至ることは免れた。

バイロインは近くでその様子を見ながら失笑する。

しばらくしてもグーハイの反応がないため、スーフーはバイロインに質問する。

「ダーハイ、どうしたんだ?」

バイロインはでたらめを言う。

「こいつは足を挫いたんだ」

「足を挫いたぁ?」

リーシュオはあっさりした表情をする。

「まさかそんなことあるか?ダーハイは前にな、腕を骨折したことがあるんだけどさ。その時は気にしないで俺たちと一緒にボールで遊んだんだ。それなのに足の捻挫で寝込むのか??」

「確かに!そうだよ!」

スーフーはグーハイの足元に向かい、布団をまくり上げる。そしてグーハイの片足を引っ張り上げて大声で質問する。

「どっちだ、こっちの足か?」

こんな感じで引っ張られ、グーハイの足は無理に広げられた。グーハイのこの時の苦痛は想像するに容易い。

「こっちじゃないのか。じゃあこっちか?」

そう言ってもう片方の足を引っ張る。

引き裂かれるような痛みに堪忍袋の緒が切れ、グーハイは怒鳴り声を上げる。

「てめぇこの野郎!!引っ張るんじゃねぇよ!!」

バイロインは傍で心が痛みながらも笑いそうになる。しかしこのような状況で笑うのはあまりにも酷すぎるため、なんとか我慢して歯を食いしばって笑いを堪える。

リーシュオとスーフーはグーハイが仮病でないことに気づき、すぐ隣にしゃがみ込んで話を逸らす。

「ダーハイ、お前いつも頑丈なのに、足を挫いただけでこんなに騒ぐか普通…」

「そうだよ、この前だって寒中水泳してただろ?あんなに長い間鍛えてたのにどうしてこんなことになるんだよ?」

「どっちの足を挫いたんだ?俺、さっき両方の足握ったけど分からなかったぞ!」

「ダーハイ、こっちを向いて話してくれよ。足を挫いたからってうつ伏せにならなきゃいけないわけじゃないだろ?」

「そうだそうだ、座ってくれよ。そんな姿勢じゃ疲れちまうだろ?」

グーハイは近くのやかましい二人に顔を向けておどろおどろしい顔で一言。

「失せろ!!」

しかしリーシュオはグーハイの言葉を気にも留めずスーフーのことを押した。

「お前、ダーハイのこと手伝ってやれよ。足が痛くて力が入らなくて座れないんだろ」

それを聞いたスーフーが一歩踏み出そうとした瞬間。

「お前ら全員俺から離れろ!誰か俺に触れてみろ!?」

これを聞いた二人は固まる。お互いに目を合わせてグーハイが本当に怒っていることに気づく。本当に自分たちが触ってもいいのか悩んでいる。

「それなら…」

リーシュオは何かを察した表情をする。

「インズ、お前ダーハイのこと起こしてこいよ」

バイロインは傍観者を決め込んでおり油断していた。この話を聞いて全員固まる。

「どうしてだよ?」

スーフーがバイロインのことを押す。

「ほら早く行けよ!ダーハイはお前なら喜んで触らせるだろ」

押されてバイロインは思わず転ぶところだった。

「なんでグーハイのことを座らせる必要があるんだよ?」

バイロインは困り果てた顔をする。

「そんなの決まってるだろ。あんなうつ伏せ状態のままじゃダーハイも疲れて大変だろうが!」

これが普段ならバイロインは相手にしないかもしれないが、彼は嘘がバレてしまうかどうかビクビクしており、正常な判断がつかなくなっている。人は嘘を隠すためには困難なことでもなんとか成し遂げて嘘を隠し通そうと努力するものだ。

なんと酷い仕打ちだろうか。これが女の子であれば今頃とっくに泣き喚いて音を上げているところだろう。

バイロインはグーハイにゆっくりと近づいていく。グーハイは首を振りながらバイロインは見ている。バイロインは正直、グーハイに怒鳴りつけて欲しかった。そして突然バイロインは耐えられなくなり、身体の向きを変えて逃げ出そうとする。

そんなバイロインをグーハイは見て笑い、とてもおとなしくしている。そしてバイロインは観念してグーハイの身体を起こそうと再度グーハイに近寄る。そんな中グーハイの一切不快な態度を示さず、黙ってバイロインのサポートを待っているように見えた。

”お前酷いな…”

グーハイは声には出さず、バイロインに向かって口だけ動かした。

バイロインはそれを見て見ぬふりをして、わざと力を抜いてグーハイの腕の力に頼って補助する。

ーーお前わざとやってるのか…?…俺はお前が寝たきりの時、付き添って親身に看病し辛い思いに耐えていたって言うのになんなんだよ…お前はまだベッドに座れるだけマシだろ!?

 リーシュオとスーフーはそばで二人のやり取りをしばらく見ており、見れば見るほど二人がなぜこんなに大変そうにしているのか理解に苦しんでいた。

 長い間ぐずぐずして、やっとのことで手を出した。こんなに時間をかける意味はあるのだろうか。

バイロインは二本の腕をグーハイの腕の中に通して、腰をかがめながら勢いをつけて少しずつ上に持ち上げる。

グーハイは最初、協力的ではなかったが、自分もそのままでは逆にしんどいということに気づいて協力せざるを得なくなった。二人はまるで畑を耕している人のように頻りに息を荒げている。最終的に顔が真っ赤になったいた。

 「なぁ、ダーハイのやつ、本当は重い病気なんじゃないか…?」

リーシュオがスーフーにそう耳打ちした。

スーフーは腑に落ちた様子で賛同している。

「下手したら粉砕骨折してるのかも…」

「なんで病院に行かないんだよ?」

「忘れたのかお前、ダーハイは子供の頃から病気知らずだっただろ」

そしてついにグーハイは悪戦苦闘の末、座ることができた。

バイロインは腰を伸ばして伸びをする。額の汗を拭き、達成感により勝ち誇った顔でリーシュオとスーフーのことを見た。

「じゃあ、失礼するから!」

バイロインはあっけに取られ沈黙する。

グーハイは目を真っ赤にして二人を見ている。

「お前たちが…俺を座らせて話がしたいって言ったんだよな…?」

「俺たち、お前を見てたら辛くなってきたよ…話すのはまた今度でいいよ」

グーハイはもし健康体であれば今すぐベッドから飛び降りて、二人に何百回も往復ビンタをかましているところだ。

ーーふざけんなよ……もっと早く言わなかったんだ、おいコラ!?

 

 

お昼になり、バイロインは二人前の出前を注文し、昼食を取ることにした。

二つのうち、一つはとても質素で味があるようには見えないほうれん草のおかゆ。もう一つはとても美味しそうな肉の香りが漂い、見ているだけでよだれが出てくるお肉の弁当が届いた。

グーハイは隣からバイロインが食べている美味しそうな肉の香りを嗅いで、自分の食べている茶碗の中のほうれん草のおかゆを見て、不満をこぼす。

「おいおい、俺のはこれだけかよ?」

バイロインは口元を肉の油でテカらせながら言葉を返す。

「お前、今は油っぽいものは食えないだろ。消化に良い物じゃないとな」

ーーだったわざわざ俺の前で食うなよ!お前嫌がらせかよ!?

グーハイの不満はついに爆発する。

「お前が怪我した時は俺も付き合って四日間点滴をつけた。その間何も食わずにな」

「お前の真似なんてできるかよ」

バイロインはそう言って大きな肉を歯で千切り、大きな口で頬張っている。

「お前はもう怪我しているんだ。俺までダメになったら誰がお前の面倒を見るんだ?」

なんと美しい言い訳だろうか。

グーハイはそれを聞いてつい可笑しくなってしまい、涙を浮かべながら笑う。

バイロインはグーハイの茶碗の中を覗き、まったく減っていないのを見て質問する。

「食わないのか?」

グーハイは答えない。

バイロインはグーハイの持っている茶碗を奪い取り、近くにあったスプーン取っておかゆをひとすくいしてグーハイの口元に運ぶ。

グーハイは笑いながらバイロインを見て、わざと質問する。

「ん?これは何のつもりなんだ?」

バイロインは冷めた目をしてグーハイに話す。

「いいから口を開けろ」

グーハイはそれを聞いて素直に口を開ける。口に放り込まれたただのおかゆはバイロインの介助によって、たちまちご馳走へと変わった。

グーハイが口を開ける度にバイロインがおかゆをグーハイの口に運ぶ。そんな作業を繰り返していると突然玄関のドアを叩く音が聞こえてきた。

バイロインが振り向くと、玄関の前に大きな二人の姿が見えた。

一方は怪訝な顔つきをしたグーウェイティン、もう一方は正装でバツの悪そうに苦笑いをしている警備兵。

バイロインは驚きのあまり手に持ったおかゆをもう少しでベッドのシーツにこぼすところだった。

先ほど玄関で出前を受け取ったあと、ドアを閉め忘れてしまっていたのだ。

四人は沈黙していたが、警備兵が笑って口を開く。

「入ってもよろしいですか?」

グーハイが冷たく答える。

「あぁ、入れよ」

警備兵よりも先にグーウェイティンが先に入ってくる。厳しい表情をしているが、目はどこか優しく見える。警備兵は彼の後ろを着いて歩く。

「シャオハイ、少将はあなたが病気だと聞いてわざわざ戻ってきたんですよ」

グーハイ・バイロイン「………」

 

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今日で毎日投稿は終わりです!

 Twitterでも告知しますが、次回の投稿は5/12(火)12:00から再開します。

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結構続きが気になるタイミングで毎日投稿終わってしまいましたね…笑

血反吐を吐きながら頑張ったので少しお休みをください(._.)笑

2020年のバイロインの旧暦の誕生日は6/21(日)、グーハイの旧暦の誕生日は6/26(火)です。この辺も余裕があれば連続投稿しようかなと考えています。

皆でお祝いしましょう!

 

中国の誕生日について:

中国は旧暦を大事にしており、日本と同じ太陽暦の誕生日とは別に旧暦でも誕生日が存在して二つ誕生日が存在します。

中国でも太陽暦カレンダーを使って生活していますが、旧暦のカレンダーもあり各お祝い行事は旧暦ベースです。

旧暦は毎年日付が日本のカレンダーとはズレます。

例:日本のカレンダーで2020/4/1に生まれたとします。

この場合、2020/4/1の旧暦の日付は3/9のため、この人は毎年、日本のカレンダー「4/1」と旧暦の「3/9」に該当するその年の日付で二つの誕生日になります。

旧暦の誕生日だけが分かっても、生まれた年が分からなければ太陽暦の誕生日は不明になります。

この場合、

バイロイン 太陽暦誕生日:不明 旧暦誕生日:5/1(毎年日本カレンダーと日付にズレ有、旧暦カレンダー参照)

グーハイ 太陽暦誕生日:不明 旧暦誕生日:5/6(同上)

になります。

 

作品内で今のところ二人の太陽暦の誕生日は出てこないので不明です。もしどこかで出てきており気づいていなだけだったらすみません(._.)

 

:hikaru