第48章:苦しめるモノ
グーヤンは事務室に一日中閉じ込められていた。しかし、この場は事務室というにはあまりにも閉鎖的で殺風景である。むしろ、取調室と言った方が正しく感じられた。
閉じ込められてから二人の医者が来たが、怪我の様子を少し調べられただけで、特別な処置などもせず黙って出て行った。
三度の食事を運ぶ係が常に近くに居るが、その人に動きはない。冷たいベンチに座って、頭を前後に揺らしている様子が見えるだけだった。
グーヤンは、なぜ自分が閉じ込められているのか理解できないでいた。また、同時にあの軍人に怒りも覚えていた。
ーーなんでこんな仕打ちを?車でぶつかった時に頭でも強く打っておかしくなったのか?
この状況はよろしくない。事情もよく知らないまま、自分(グーヤン)の身分も理解していないのか強引に閉じ込められたのだ。
ーー俺が誰の息子なのか、軍部にいながら理解出来ていないのか?
いくら考えても答えは出てこない。
煮詰まった時、重い扉が音を立てて開かれ、大きな体躯と鋭い双眸が目に入る。
リョウウンはゆっくりと威厳ある歩き方で室内に入ってくる。まるで大衆を支配する演説時のような、場を圧倒するオーラを感じた。
「待たせたな」
リョウウンの低い声が部屋に響く。
「一体何をするつもりだ?」
「...お前が気に入ったんだ!」
グーヤンの頭上に雷が落ちる。
ーー俺を何だと思ってやがる!...通りでバイロインがこいつを毛嫌いしてたわけだ。こんなじじいの相手なんかしてられるかよ
「...発言するときは、ご自分の立場を考えてから口にした方がいいと思いますが?」
リョウウンは何も言わず、グーヤンの肩を掴む。掴まれた方はグーハイによって痛めつけられた箇所。痛みを感じない方の手で掴まれたリョウウンの腕を掴み、引き離そうとする。しかし、リョウウンの鍛え上げられた腕は巨大な一枚岩のようにピクリとも動かせなかった。
グーヤンだって鍛えていないわけではなかったが、リョウウンの地位や年齢を考えると、ここまでの体型を維持しているのは尊敬するべき事だと思う。
彼の人格がもっとまともな人間だったら、グーヤンは称賛していただろう。
肩を掴んでいるリョウウンが、静かに口を開く
「服を脱がしてやるよ」
脈絡もなく侮辱行為を宣言され、一気に血が沸き立つ。
「何だと!?」
グーヤンは怒りで赤く染まる瞳でリョウウンを睨みつける。
「俺の服を脱がしてみろ!...その時にはお前を社会的に抹殺してやる!信じられないならやればいい!ただ、覚悟しておけよ!!」
「フッ...荒々しい言葉だな、グー大少」
「グー大少」という言葉を聞いて、グーヤンは肩を震わせる。
ーーこいつ...俺の身分を知っててやってるのか!!
「おい!誰か来て、こいつを抑えてろ!」
リョウウンは入り口の見張りをしている二人の兵士に命令する。
体格のいい兵士二人が部屋の中に入ってきたが、グーヤンが発する怒りのオーラに怖気付き、体が硬直してしまう。
「何ボサッとしてるんだ!!」
リョウウンが怒鳴ると、彼らは弾かれたように動き出す。リョウウンに従わなかった方が大惨事になるのは、目に見えているからだ。
二人ががりでグーヤンの体を冷たいベンチに押し付ける。
それから、リョウウンは一歩ずつ近づき、グーヤンのシャツのボタンを一つずつゆっくりと上から外していく。
「おい、両腕をしっかり抑えてろ」
その言葉に反応して、兵士がグーヤンの腕をしっかりと掴む。抵抗が出来ないグーヤンは、されるがまま、十字架に磔られたキリストのような格好で顔を歪める。
上半身が露わになると、リョウウンはそのままズボンに手を掛け、下半身も丸裸にさせた。
幼少期から今まで、ここまで屈辱的な行為をされたのはリョウウンが初めてだった。
グーヤンの口は逆反りした刃のように鋭く閉じられている。
その頭の中は、既にリョウウン復讐計画が始動されていた。
「スタイルがいいな」グーヤンを舐めるように見つめる「あと二センチあれば、完璧だったのに...」
実は、グーハイはグーヤンより二センチ身長が高い。しかし、自分が身代わりにされていることなど知らないグーヤンは、その言葉の意味が分からずにいた。
グーヤンは彼の次の行動を注視していたが、眺められるだけで、特別なことはされなかった。
暫くして、リョウウンはグーヤンの怪我をしている方の肩に再度、手をかける。
逃げようとしたが、押さえ付けられているグーヤンは大人しくする事しか出来ない。彼の手が素早い動作ではめるような動きをする。
ガチンッ!!
「...ッッッ!!?」
鈍い骨の音が鳴ったと同時に、激痛が肩を襲う。グーヤンは涙目になりながら、何されたのかわからないでいた。
「もういい。肩、もう動くだろ?」
リョウウンは優しく微笑む。
不思議に思いながら、肩の方に意識を向けてみると、確かに痛みがとれていた。脱臼を治したようだ。
「ほら、服を着ろ。他の部屋を手配してやる。待っててくれ」
「...服を脱がしたのは、この腕を治療するためか?」
それでもズボンを脱がされたのは意味が分からず、怒りは収まっていない。
グーヤンの怒った表情を見て、少し笑みを浮かべると、近くまで寄り、鼻が触れるくらいの距離を保つ。
「まだ俺に何かさせたいのか?...お前のチンコに爆弾を括り付けるか、お前の玉袋を手榴弾 二個に挿げ替えるか...どちらが好みだ?」
男性として、そしてこの状況でもっとも屈辱的な言葉を投げかけられ、グーヤンは怒り狂う
「お前の脳みそは、膀胱の中にでも埋め込まれているのかよ!!」
「やることも論理的ではないし、非人道的だ!」
「こんなことしてどうなるか分かってるのか!!?」
「おい!このクソやろう!...この!変態クソじじいが!!」
グーヤンの罵倒にリョウウンは怒る気もなく、部屋から出る前にグーヤンの顎を掴み「お前のその瞳は、俺が思っていたよりも腐っていているな。...でも、それがたまらなく好きだ」と吐き捨て、大股で歩いて行った。
残されたグーヤンは様々な感情が渦巻き、自分でもよく分からない心情になっていた。
気分が良くなったリョウウンは、恒例の深夜の呼び出しを鳴らす。
数分後、全兵は訓練場への集合を完了する。
バイロインは、リョウウンがグーヤンを送り届けると思っていたので、今日は安心して過ごせると気を楽にしていたが、まさかの集合に気が滅入る。
「バイロイン!前に出ろ!」
指示に従い、一歩前に出ると、リョウウンは続けて命令する。
「伏せろ!」
ーーまじかよ
バイロインのあそこは、粗悪な商品の迫害を受けて激痛に襲われていた。いまだに回復しておらず、命令に従って伏せた時には布が擦り、メンツを気にしなければ今にでも泣き出したいほどだった。
「立て!」
激痛を我慢して命令に従う。
夜の暗さが、バイロインの苦痛に歪む顔を隠してくれていた。
「なぜ、こんなことをさせたのか分かるか?」
リョウウンからの問いかけに、心の中では「ただの嫌がらせだろ!」と罵りながらも口にせず、「私の目を覚ましていただいてありがとうございます!」と声を張る。
満足そうにうなずいたリョウウンは訓練場の将兵全員に命令を下す。
「将兵全員、俺の号令を聞いて、速やかに伏せろ!」
再度、同じ行為をする事に絶望しながらバイロインもその号令に従う。
「ダメだ!動作が揃っていない!もう一度!!」
「.... .....」
「まだ揃っていないぞ!!」
ーー誰だよ!こんな簡単なリズムについていけてない奴は!...誰か分かったら、後でそいつのところに怒鳴りつけてやる!!
何度目かでやっと全員の動作が揃い、解放される。しかし、これで終わりではなく、そのまま飛行訓練にスライドした。
激痛に耐えフライトする。操縦桿を握る手は痛みから来る痙攣で震えていた。
ーーなんでこんなところで、死の危険を感じなきゃいけないんだ!!
何とか根性で戦闘機を着陸させ、格納庫へと移動させる。
「バイロイン、帰還しました!」
管制官がそう言ったのを聞き、リョウウンはコックピットから降りてくるバイロインの元へと向かう。
「お前、また体温が低いんじゃないのか?」
そう言いながら近づいてくるリョウウン。その表情はどこか心配しているようだった。
「手が震えるのは寒いからではなく…」
「言い訳はいい、とにかくその手の震えが証拠だろ」そう言いながら、リョウウンは自分の額とバイロインの額に手を当てて、検温する「最近、ちゃんと運動してないのか?」
その言葉に、バイロインは否定が出来なかった。
彼の最近の一番多い運動は、布団の中で行われるものだけだったからだ。しかも、自分より体温の高いグーハイという湯たんぽが常に隣にいるのだ。自然とバイロインの平温も低くなっていた。
「すぐに鉄棒の訓練に移れ。上下百回の動作をワンセットとして、二時間以内で五セットを終わらせてこい」
バイロインの顔はさっと青くなる。
ーー鉄棒に登る?...この股間が痛い状態の時に言う訓練か?! 何でこいつは、俺に酷い試練を与えるんだよ!?
「水泳に変えられますか?!」バイロインは建設的に提案する「水泳も体を暖められますし、手が震えてる今、掴む動作よりも効果的だと思います」
しかし、その提案は簡単に否定される。
「水泳はお前の役に立たない。」
すると、腕時計をちらりと見て「今から時間を計るぞ」とバイロインを急かす。
バイロインは泣きたい気持ちを堪えながら、鉄棒のある訓練場へと歩いていくのであった。
訓練が終わり部屋へと向かう途中、バイロインの頭は真っ白になっており、その両足はもはや機能しなくなっていた。
寮のドアを押し開けて、フラフラとベッドまで歩いていく。
そのままベッドに倒れ込むと、もはや風呂に入る力は残されていなかった。
毛布に包まり、股間を押さえて涙目になる。
「いた...いぃ〜〜....」
自分のそれを痛めつけた張本人は枕元に置かれてあった
「この!...くそやろ!」
感情に任せてそれを持ち、床に向かって叩きつける。すると、まもなくして電話がかかってきた。
「もしもしぃ〜...?」
バイロインの声は死にそうな感じがする。一方でグーハイの方は、元気そうだった。
『おい!あのおもちゃで遊んだのか?!』
「誰があんなので!...」
文句を言おうにも、そんな気力もない。
『否定すんなって!それにはセンサーが搭載されていて、お前がそれに触れて動かすと、俺のところにある物も連動して振動するんだよ!』
バイロインは床に転がるそれを見つめる。グーハイから電話がかかってきた理由を作ったのは、自分のようだった。
「遊んではない...」
ひたすら否定するバイロインに、思わず笑ってしまうグーハイ。
「照れんなよ〜。何でお前はこの手になるとそんなに弱くなるんだ?」
「....何で弱いのか知りたいか?」
息を吸い込み、電話口に向かって大声で叫ぶ。
「俺の八代前の祖先が雑草なんだよ!!!」
言い終わると、恨みを込めて終了のマークを叩いた。
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リョウウンが話す部分。今までは局部を誤魔化した言い方してきましたが、あそこは馬鹿にするようなセリフの為、あえて隠さずに訳しました。もし、不快な方が多くいるようでしたら、修正を考えます。ご連絡ください。
それよりかも、リョウウンの性癖やばいですね...Sなのかな?(笑)
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:naruse