第157章:小さな強敵
バイハンチーが部屋から出ていった後、グーハイはバイロインの布団の中に潜り込み、手でバイロインの足を包む。バイロインは最初、必死にグーハイの手を振り払おうとしていたが、段々と足の裏が温まってきて、身体全体が気持ち良くなり、無抵抗のバイロインにグーハイもこれ以上困ることはなかった。
「何か食えよ、トンテンから食ったもの全部吐いたって聞いたぞ」
グーハイが身体を起こして、部屋の外に出ていこうとした。
するとバイロインがグーハイの身体を掴んだ。
「行くな、腹が減ってないんだ。それにまだ吐き気が止まらないし」
「じゃあ少しでもおかゆくらいは食えよ」
「食べたくない」
グーハイは致し方なしにバイロインを見たが、やはり部屋の外に出ていった。
トンテンは庭で棒を振り回していた。グーハイを見ると、小さい顔に一輪の花がパッと咲いた。グーハイに抱きつき、大きな声で話す。
「グーハイお兄ちゃん、今日は帰らないの?」
「あぁ、帰らないぞ」
グーハイもニコニコしながらトンテンを見ている。
トンテンは細い首を傾げながら、目をキラキラと輝かせている。
「”ボクの部屋”で寝るの?」
それを聞いて最初、グーハイは固まった。そして、あのバイロインの部屋はトンテンの部屋になったのだと思い出した。
「おう。あの部屋で寝るよ」
「三人で一緒に寝てもいいよね!」
トンテンは興奮した様子でグーハイの周りをグルグル回っている。
「え~っと……」
グーハイはトンテンを捕まえて、当たり障りないようにトンテンに喋りかける。
「トンテン、今日はお母さんと一緒に寝てくれよ。あのベッドは俺たち三人で寝るには狭すぎる」
「大丈夫だよ、僕は狭いところで充分だから」
トンテンも簡単には引き下がらない。
グーハイはゴホンゴホンと二回咳払いをし、困った顔をしながらトンテンを見ている。
「お前のバイ兄ちゃんは病気なんだ。ちゃんと休まないといけないだろ。三人で一緒に寝たらちゃんと眠れないだろうしさ」
「誰が言ったの?」
トンテンは目を輝かせている。
「バイ兄ちゃんが熱を出してね、僕のお母さんが『熱を出したときはたくさん汗をかかないといけない。だから一緒にくっついて寝て汗をたくさん出さないと』って言ってたんだ」
グーハイは額に手をあてて、奥の部屋を見てからトンテンの小さな頭を叩いた。
「とりあえず俺は台所に行って食い物を取ってくるから、これはまた後で話し合おうな」
トンテンは勢いよく頷く。
「わかったわかった!」
そう言ってトンテンは走っていった。
ーー話し合うだ?
グーハイは心の中で冷たくうめき声をあげる。
ーー部屋に着いたら鍵をかけてやるからな!
おかゆを一杯作って持っていったのだが、ドアのカーテンを持ち上げる必要はどうやら無くなったようだ。
持っている粥椀をもう少しで床に落とすところだったのだ。
なぜなら、目の前でトンテンがグーハイの寝るはずだったところでバイロインの腕を抱きながらぐっすり寝ているのだ。グーハイは我慢できず、牙をむき出しにする。
ーーこのガキ、なんて行動が早い奴なんだ!
グーハイはまずおかゆの入ったお椀を置いてから、何も言わずにトンテンを抱き上げて外に運んでいく。トンテンはまだ夜驚症を起こすことがあるようで、小さな足を動かし、平たい口は渋い表情をさせている。
丁度この時、ツォおばさんがトンテンを探していたようで、トンテンを抱いているグーハイを見かけて、思わず頬に笑みがこぼれる。
「この子はあなたにくっつくのが好きでね、毎日あなたが来るのを待ってるのよ」
そしてグーハイはそーっとツォおばさんにトンテンを手渡した。そしてほっとして、部屋に帰るとそこではバイロインが丁度、自力でお椀を持っておかゆを食べようとしていた。
「俺にやらせろ」
グーハイはバイロインの手からお椀を奪い取る。
バイロインも抵抗せず、グーハイに従う。
グーハイはおかゆをスプーンですくい、自分の口元まで運んでフー、フーと冷ましてから、舌の先を当てて確かめる。そして丁度いい温度になったのを見計らってバイロインの口元に運ぶ。
バイロインも大人しく口を開けて食べた。
グーハイはバイロインが二日間なにも食べずお腹を空かせていることに胸を痛め、口を開かずにはいられなかった。
「教えてくれよ、お前は頭が良いんだろ!なんであの時返信しなかったんだよ?携帯を持っていなかったのか?あいつらがお前を外に出させなかったなら、誰か探して外から中にパンとかソーセージを投げるんじゃダメだったのか?」
「それが出来てたら、今お前は俺をこうやって看てないだろ」
グーハイはため息をつく。今これを言ったところで過ぎたことだし、何を言ったところでどうにかなるものではない。
「ちょっと待って」
バイロインはグーハイのスプーンを持っている手を止める。
グーハイは表情を硬くしてすぐ尋ねる。
「どうしたんだ?」
バイロインは胃の辺りを手で押さえて、苦しそうな表情をしている。口をぴったり閉じて、また吐いてしまいそうな様子だ。
バイロインはしばらくためらった後、外に出て吐こうと決める。
「行くな。俺の手の上に出せ」
そういってグーハイは手を差し出す。
バイロインはグーハイをちらっと見る。
「お前気でも触れたのか?」
「お前のなら別に構わねぇ」
グーハイはとても真剣な顔でバイロインのことを見つめる。
バイロインがグーハイの大きくすべすべした掌の中心、ハッキリとした掌の模様を見ている。
ーーどうやってここに吐けって言うんだよ!
バイロインは体を後方に反らして、顔を上に向けている。苦しさに耐えながら、おかゆが胃から出てこないように祈っている。
そうしているといきなり、胃の辺りを真っ直ぐゆっくりとさすられて、バイロインが目線を下に向けると、そこにはグーハイの手があった。
「少しは良くなったか?」
グーハイが質問する。
バイロインは正直に頷く。
グーハイはバイロインの目が自分の手の動きを追っているのを見ている。睫毛がサラサラと揺れている。長くはないが、濃くてとても黒い。耳の周りには髪の毛が絡んで筋になってそこに張り付いている。そしてその主は今はこんなにも大人しく従っているのだ。バイロインのことを見れば見るほど、さらに愛おしくなっていく。
「また食うか?」
グーハイがバイロインに尋ねた。
「うん」
バイロインはとてもすっきりしているはずだ。
グーハイは食べさせながらニヤニヤしている。それを見てバイロインはイラっとする。
「俺のおかゆを食べている姿の何が面白いんだ?」
「お前が食ってるところが面白いんだ」
バイロインは黒い顔をしている。
ーーおかゆを食べてるところの何が面白いんだよ?こいつ頭おかしいのか?
急に食べ過ぎたせいか、バイロインはまた胃に不快感を感じ、それに気づいたグーハイはすぐさまバイロインに手を伸ばす。
このまま休みながらしばらく食べ続けていると、やっと胃が食べ物を受け入れるようになった。
「まだつらいか?」
「ちょっとな」
グーハイは黙々とマッサージをし続けている。胸からお腹にかけて優しくゆっくりと下に移動していく。指の腹を使ったり、手のひらを使ったりしてマッサージをしていく。段々と胃の辺りが温まってきて、バイロインも気持ちよくなって目を細める。そしてウトウトしていると、急にくすぐったく感じて、すぐに目を開いた。
なんとグーハイはマッサージしていた手を胸の小さな突起のある部分に移動させていたのだ。
「テメェどこ触ってんだよ?」
バイロインはすかさず怒る。
グーハイは笑いながらバイロインの頬をつまんだ。
「俺は触ってみただけだ。そんなに敏感なのか?」
ーーどこが触ってみただけだって?お前はここをどんだけ揉んでたか自分で分かってるのか?
バイロインはこの悪口を口に出すことはしなかった。
すると、グーハイはかえって厚かましく尋ねてきた。
「したくなったか?」
バイロインは手のひらでグーハイの頭を引っ叩く。
「したいね、お前の伯父さんとな!」
「どうやって伯父とするんだよ?お前は俺だけのものだ。お前を犯していいのは俺だけなんだ」
そう言い終えると、頭を下げてバイロインの左胸の小さな突起を口で咥えて、右手を反対側にあてがう。口では吸って、指では摘んで両側を弄ばれ、快感に身をゆだねる……
バイロインがこんな”挑発”に耐えられるわけもなく、即座に片足を上げて、膝をグーハイの股間に押し当てる。
グーハイはしばらくバイロインの胸を責めていたが、ずっと下の方に移動する様子はない。バイロインを掛け布団越しにしっかりと抱きしめている。
「よし、お前は病み上がりだから身体も弱ってるだろ。お前に負担をかけちゃ悪いからな」
バイロインの瞳の奥には魅惑の恨みが見える。
「今更そんなこと言うのか?」
グーハイはしゃあしゃあと説明するように話す。
「俺の”息子”はお前にすごく会いたかったんじゃないかなぁ?」
そう言い終えるとグーハイは自分の体の下へ手を伸ばしていき、ちびグーハイを好きなように弄り快感に浸る。バイロインは見せつけられながらグーハイの荒い喘ぎ声を聞いていた。グーハイの扇動的で享楽的な表情を見ていると、心がムズムズとしてくる。
グーハイは一声一声喘ぎながら会話しているようだった。
「お願い…しろよ…甘えて来い…そしたらすぐに…面倒見てやるから」
バイロインは振り向いて、心の中で冷たく小言を言う。
ーー俺には手がないのか?自分じゃできないのかよ?
グーハイは隣の”動き”を聞き、彼の口元に一抹の悪い笑みを浮かべる。グーハイは顎をバイロインの腰に押しつけながら彼の下半身をじっと見ている。
「随分強く擦ってるな?手伝ってやろうか?」
バイロインは恥ずかしくなり、耳を赤らめ、首をこわばらせながら返事をする。
「…必要ない」
するとグーハイはバイロインの足の付け根を隅から隅まで舐め、またもう一方の足も舐める。
バイロインは意図せず背筋がピンと張ってしまう。
そしてグーハイは冗談めいた口ぶりで話す。
「まだ俺の口に入れる”必要はない”のか?」
ここまできたら、もうバイロインに恥ずかしがる理由などなく、グーハイの頭を掴んで自分の股間を押しつける。するとすぐに強力な一筋の電流が股間から脳に流れ、頭がぼんやりとする。
ここはバイロインの実家であり、ローションなどはなく、これ以上のことはできなかった。
そして事が済んだ後、二人は抱き合いながらとても長い間キスをした。どちらも、お互いの唇から離れたくなかった。
「インズ、お前が探して見つけてくれたあの資料、全部見て理解したよ。これからは、俺はもう母親のことでくよくよしない。お前が俺のためにしてくれた全部のことを、俺は心にずっと留めておく。俺がお前を叱るのはお前が大切だからなんだ。俺を怒らないでくれるか?」
「もし俺が本当に怒ってたならお前はここで横になんてなれてないだろ?」
そう言いながらバイロインはグーハイの前髪をものぐさそうにいじっている。
「本当は怒ってなかったんだよ。がっかりしたんだ。お前なら何があっても俺を褒めてくれると思ってたからさ」
「お前の目の付け所と行動力はホントにすげぇし褒めたいけどよ、でもやり方がよくねえだろ。これからはこんなやり方で問題を解決しようなんてするな。誰であろうと、何かのために自分を犠牲にするなんてこと、あっちゃいけないんだ。もしまたやろうものなら、絶対にただじゃ済まないぞ。聞こえたか?」
バイロインは黙っている。
グーハイはバイロインの耳たぶを指で掴み、もう一度質問する。
「聞こえなかったのか?」
バイロインは目を開けて、けだるげに答える。
「…聞こえたよ」
グーハイは満足げにバイロインの口にキスをして柔らかい声で言う。
「ほら、寝るぞ」
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※動きを『聞く』という描写について
直接は見えなかったけど、バイロインの激しい自慰でベッドが軋み、その音を聞いたグーハイは思わず口元に笑みを浮かべ覗き込んでいたのかなと。
ここら辺のシーンはあまり詳細な描写がないので、前後関係は読者の想像にゆだねられています。
バイロインさん、B地区開発済…?初…え…?
天性の受けですね
てかローションあったらやってたのかよ、家族いるだろw(しかしそれはそれで見てみたいので実家にローションがある世界線のSS、誰か書いてください)
ツイッターでもお知らせしましたが、1~2週間以上、投稿をお休みします。
しばらく投稿まで空いてしまいますが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
:hikaru