NARUSE'S:BLOG

ハイロイン/上癮:Addictedの原作小説を和訳している男子大学生でした

第124章:今までそこにあったもの

「なあ、ダーハイたちは冬休みなんだよな?」とリーシュオはチョウスーフーに尋ねた。(リーシュオとチョウスーフー(愛称:フーズ)はドラマにも出てきたグーハイの友達)

「ん?今日って何日だ?」

そう言ってリーは旧暦の日付を調べ、驚いて声をあげる。

「おい!もう十二月二十二日じゃないか!明日は小年(中国の休日)なのか」

「ああ、そうだよ…だから俺はダーハイが休みかどうか聞いたんだ」

「うーん、休みのはず…だよな?でも、おかしいな…そうだったらまず俺たちのところに来るよな…?顔を見せられないにしても電話ぐらいしてくるだろうし…」

スーフーはため息をついてダルそうに答える。

「何か忙しくなることがあって、俺らの”アニキ”(グーハイ)は俺たちのことを忘れているのかもな」

リーは突然笑い出してスーフーの腕を小突いた。

「なんだよ。お前はダーハイが一日中家にいて、こっそりお兄ちゃん(バイロイン)と”楽しく”遊んでいるかも知れないって言いたいのか?」

 「この!バカ野郎!」スーフーがリーの頭をはたく。

「男同士で何するっていうんだよ!」

リーはスーフーを叩き返す。

 「でもさ、この前二人の家に行った時、覚えてるか?あの二人本当びっくりするぐらい気があってたよな!」

その話を聞いてあの日の夕食の様子を思い出してスーフーも笑い出す。スーフーは自分のあごを撫でながら言う。

「でも、まだ確実じゃないけどな」

「ははは…」リーは立ち上がりスーフーを呼ぶ。

「よし。見に行くぞ」

そう言って駐車場に向かうリーをスーフーは慌てて追いかける。

 

二人は車を運転しながら話している。

「俺、ダーハイとインズが一緒にいるところを見るのが大好きなんだ。二人ともすげー面白いし」

「わかるわかる。ダーハイがあんな風に人の面倒を見るなんて生まれて初めて見たよ」

二人が雑談している間に、グーハイの家についた。ドアベルを鳴らしたが、誰も出てこない。次にドアを叩いてみたが、誰も返事をしない。そこでグーハイに直接電話したが電話に出なかった。

最後にマンションの管理人にグーハイについて聞いてみると、ここ何日間かグーハイには会っていないと言われた。

「旅行にでも出かけたんじゃないか?」

リーはスーフーを見る。スーフーは眉をしかめながらつぶやく。

「んー…旅行に行ってたとしても、電話くらい出れるだろ?」

そんなことを話しているとグーハイから折り返しの電話が来る。

『今、軍の基地にいるんだ。なんか用か?』

「マジで言っているのか?!この長い休みの間、何の連絡も無いし、俺たちはアニキに会いたくて寂しかったんだぞ」

『あぁ、わかったわかった。じゃあ会いに来いよ』

グーハイがそう言って電話を切る。二人は車でグーハイがいる軍の基地に向かう。

 

 

 グーウェイティン(グーハイの父)は基地内の大きな池の岸辺に立ち、冷ややかな目で水面を泳ぐ人達の姿を見ている。

ソン警備兵はグーウェイティンに望遠鏡を差し出す。

しかし、グーウェイティンは手を伸ばして「大丈夫だ。いらない」と断った。

ちょっとしてからソン警備兵は発言するかどうか悩んだが、恐る恐る口を開く。

「少将、救助のために船を呼んで参ります。シャオハイを呼んでください。こんな寒い中泳いでいて、もし万が一何かあれば救助は困難です」

「別にあいつ一人だけが泳いでいるわけではないだろ!他にも多くの兵が訓練しているではないか。なぜあいつにはできないと言うのだ?」

「少将!彼を他の兵と一緒にしないでください!」

ーーあなたは一体何を考えているんですか…彼はあなたの息子ですよ?唯一無二な宝物である一人の息子になんて酷いことをするんだ…

もちろん直接言うことはできない。

グーウェイティンは厳かな眼差しでソン警備長を見据える。声にはとても威厳が感じられる。

「お前はいつからそんなに五月蠅くなったのだ?お前も泳ぎたくなったのか?」

ソン警備長は水の浅いところで薄い氷ができているのを見て、思わず身震いする。

「私はこの役割を与えられてから何年も冬の水には入っていませんが、若い頃は十キロ泳ぐことも容易でした」

ソン警備長は過去の栄光を思い出している。グーウェイティンは背を向けて、その場を離れていった。

少将がいなくなったのを確認して、ソン警備長は急いで近くにいる将校に怒鳴りながら命令する。

「おい、早く何人か派遣してあの子を見張らせろ!ん?少将は大丈夫だと言っていただと…?もし本当に何かあれば死ぬのは俺たちだぞ!」

 

グーウェイティンは部屋に着いて腰をかける。そしてお茶を飲みながら部下に質問する。

「あいつが来てから何日が経った?」

リュウさんの話によると、一週間くらいでしょう。昼は兵士たちと一緒に訓練して、夜もここに泊まっています。3DKの部屋を用意させました。条件は少し劣りますが、普通の集団寮よりは良いです。料理を作る担当もいますし、部屋を片付ける担当もおります。まあまあといったところですね」

グーウェイティンの記憶の中では、自分はもう何年もグーハイと一緒に正月を過ごしていなかった。これまでは正月になるといつも任務があり、グーハイはいつも母親に従って部隊に来て軍の中で食事をし、新年を祝っていた。ほかの家の子供が両親に連れられて正月用の買い物をしている中、グーハイは一人、練習場で走っていた。

ーーグーハイ…お前はいつの間にこんなに大きくなったというのだ?

 

 

リーとスーフーが到着したときには、グーハイはすでに泳ぎ終わっていた。グーハイのところに兵士が報告に来る。

「グー大少、あそこでご友人がお待ちです」

グーハイは額の汗を拭い、リーとスーフーのもとへ裸足のまま歩いていく。

 リーとスーフーは厚手の羽毛ジャケットを着ている。ジャケットの中はとても暖かいがこの時の気温はそれでも震えるほどの寒さだ。それほど寒いというのにグーハイはというと、パンツ一枚しか身に着けておらず、それでも暑い夏のときよりも汗でびしょびしょになっており、タオルでひたすら汗を拭いている。

二人は目の前の光景を信じることができず、人間とは思えないグーハイを畏怖の眼差しで見ている。

グーハイは運動が終わってとてもすっきりした様子だ。ご機嫌な様子でリーの頭を大きな手で掴み、ガシガシと揺らす。しばらくじゃれ合ったあと、グーハイは質問する。

「なんだお前ら、俺がいなくて寂しくなったのか?」

スーフーは白い息を吐きながら話す。

「さっきお前の家に行ったんだけどさ、マンションの管理人がしばらくお前のことを見ていないって言っててさ」

「ああ、そうなんだ。しばらく家には帰っていないんだ」

グーハイはそう言いながらずっとタオルで自分の体を拭いている。

「お前の”お兄ちゃん”は一緒じゃないのか?」

とリーはからかうように言った。

グーハイは固まる。しかしすぐにまた体を拭きながら、

「お前ら。これからはあいつのことは俺の前で口にしないでくれ」

と言った。

「え!この前まですごく仲が良かったじゃないか。なんでこんなにすぐ嫌いになるんだよ?」

グーハイは真っすぐ腰を伸ばし、真剣な表情で言う。

「本気で言っているんだ」

リーはまだ聞きたいことがある様子だったが、スーフーが彼をつつき、制止させる。そして、グーハイに笑顔で話しかける。

「なぁ、ダーハイ。暇つぶしにどこか出かけようぜ!」

「ああ、そうだな」

そう言ってグーハイは彼らの後をついていく。スーフーは一度咳払いをして、尋ねる。

「えっと…ダーハイ。お前…パンツ一枚で出かけるつもりか?」

グーハイは一瞬ハッとした表情をし、すぐに笑った。

「すぐ着替えてくる!悪い、ちょっと待っててくれ」

グーハイが走っていく姿を見ながらリーは思わず両腕をさすりながらつぶやく。

「あいつを見てるだけでほんと寒くて死にそうだ。もしあいつの親父が俺の父親だったら辛すぎて俺とっくに首つってるぞ…」

するとスーフーがからかう。

「あの少将からお前にみたいな弱虫は生まれないだろ!ほら、自分の体を触ってみろ、全身脂肪だらけでだらしがないじゃないか。お前の両親に同情するよ」

リーはスーフーの腹を小突く。

「お前、人のこと言える立場かよ。お前の顔は女の子のお尻よりもツヤツヤじゃないか」

 

 

”時として、人と人の間に本当の運命の繋がりが見える。”

バイロインはあの出来事から一週間ずっと家に籠っていたが、この日はそれを見かねたシーフイに連れられて街に出ていた。

リーが車を駐車場に停めて、三人は車から降りる。すると少し遠くにバイロインが見えた。本当のところは先に”超美人”のシーフイを見ていて気づいたのだが。

「おい、あれインズじゃないか?」

スーフーも気づいて、バイロインに向かって口笛を吹く。

バイロインの目は自然とグーハイに向く。しかしそれに対してグーハイはバイロインのほうを向かず、一切視界に捉えないようにしている。

グーハイの外見は変わっておらず、むしろ少し元気そうにも見えた。堂々としっかり立っている姿を見ると、また癇癪を起こす姿は想像できなかった。

「なあ、インズ。紹介してくれよ。この美人さんはいったい誰なんだ?」

リーはニコニコしながら聞く。シーフイはおしとやかに名乗る。

「シーフイっていいます」

「ちくしょう…おい、インズ!お前は運がいいな!」

スーフーは悔しそうにバイロインの肩を叩いた。

「こそこそしてるのはよくないと思うぞ!だから今度俺も誘ってくれよ」

バイロインはそれに対して適当にあしらいながらも、彼の目はグーハイをずっと捕えている。グーハイはリーやスーフーたちに合わせて笑っている。おどけながら、堂々としている。グーハイがその場を離れるまでの間に、バイロインは全くもって彼の様子から異常なものは感じられなかった。

 

 

リーたちは三人で歓楽街に来ていた。スーフーはしきりに振り返りながらため息をついている。

「ちくしょう…マジで超綺麗だったな…」

リーは頷く。

「あの二人、夫婦みたいだったな。なぁ、ダーハイ。お前もそう思わないか?」

グーハイは冷たい表情をして黙り込む。

スーフーはリーをつつく。リーはやっとグーハイが言っていた”注意”を思い出して、すぐに口を閉じた。

 

 

三人がその場を離れてからしばらく経つというのに、バイロインはまだ同じ場所に固まって立ち尽くしている。シーフイはバイロインの服の袖を引っ張り、小さな声で言う。

「ねえ、ちょっと寒くなってきたから、どこか座って休める場所を探しましょう」

抜け殻のようになっていたバイロインは声をかけられてやっと動き出した。

 

「はい。これ」

バイロインがそういってシェイクを差し出すと、シーフイは丁寧にお礼を言って受け取った。そしてずっと動かずにじっと静かにバイロインのことを見つめている。しかしバイロインの目はシーフイを捉えることはない。

先ほど、通りにいたときも”心ここにあらず”の状態だったが、今はもっと悪化している。

シーフイはゆっくりと自分の飲み物をゆっくりと持ち上げ、不満げに一口飲んだ。そして顔を上げてバイロインを見ても、彼の意識はシーフイには一切向いていなかった。思わずシーフイは大声で呼ぶ。

「バイロイン!」

どこかに行っていたバイロインの意識が戻ってくる。続けてシーフイは話す。

「ねえ、覚えている?前に私たちが付き合っていた時、私がシェイクを注文すると、あなたは一口目は固くて吸いにくいから、最初の一口を吸ってくれたよね。」

それを聞いてバイロインが思い出していたのは、シーフイと思い出ではなく家でグーハイと食事をするシーンだった。

 

 

グーハイが料理をしている。調味料を入れて味見をするのだが、いつも塩辛い味になってしまう。何度も調整し、やっと味が整ったところでついに食卓に料理が出てくるのだ。

餃子を作るときなんかは、そのせいでいつもゴミ箱に何個か失敗した”一口かじってある餃子”が捨ててあった。

 

ーそして別のある日のことー

 

『お前俺の料理がマズいって言うのか?』

「美味しいかどうか自分でわかってないのかよ」

『俺が作ったゆで卵もマズいのかよ!?』

「なんで”俺が沸かしたお湯は美味いか”って聞かないんだ?」

『お前…』

 

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リーとスーフー、この二人スラングだったり砕けた言葉をかなり多用するんですよね…

ド直訳したやつ校正しようとしたら日本語メチャクチャで全直しする羽目でした笑

もし変な表現があれば直します。ご指摘ください(._.) 

グーウェイティンの記憶の中では 、自分は~

ここ好きですね。他の兵と一緒に過酷な訓練をさせていたのもグーハイの軍人としての資質を認めて、完全に信頼しているからだと思います。

そして、何年も正月に一緒に過ごすことができなかったグーハイと今年は一緒に過ごせると心の中でウキウキしていそうなところとか良くないですか?

 

一番最後の二個目の回想シーン、ドラマ15話手袋交換の後のシーンで出てきたくだりですね。翻訳作業をしていて胸にくるものがありました。グーハイロスなインズてぇてぇ…

 

:hikaru