NARUSE'S:BLOG

ハイロイン/上癮:Addictedの原作小説を和訳している男子大学生でした

第46章:夜更けにきた検査

「乾杯!!」

暖かい部屋とは違い、外は風が強く寒さで苦しむほどの気温だった。

二人はバイロインの部屋でお酒を並べ、晩ご飯を楽しんでいる。

ドアや窓はもちろん、冷気が入ってこないようにカーテンもしっかりと閉めていた。

鍋は湯気が大量に立ち込め、部屋全体に煙が広がっては、暖かい気持ちでいっぱいになる。

バイロインの頬は熱気でほんのりと朱に染まり、少し酔った感じで鍋をつつく。

「ゆっくり食べろよ」グーハイは鍋から肉を摘むとバイロインの器へと運ぶ「どんだけ飯を食ってなかったんだよ?」

「お前がそれを聞くか?」バイロインは少し恨みの籠もった声で返事をする「まともな食事は最近してなかったんだ!」

綺麗に整った眉を捻り、怒ったような表情でバイロインに注意する。

「台所がないわけじゃないんだ。今日みたいに、テキトーに食材を買って鍋でもしたらいいだろ?...大人なんだから、少しは自分でやらないと」

「出来ない!!」

バイロインは頬いっぱいにお肉や野菜を頬張りながら、顰めっ面をする。

「なんでだよ!? ただ食材を鍋の中に入れて、沸騰させたら食べられるんだぞ?」

バイロインだってそれくらい出来ない事はなかったが、わざと強めに否定し続ける。

「やりたくない!出来ない!」

「じゃあ 何が出来るんだよ?」

グーハイは箸を置き、手を伸ばして対面に座る恋人の耳に触れる。

「...俺に怒る事しかできないのか?ん?」

バイロインは顔を逸らしてグーハイの手を外し、リスのように頬張った袋を揺らしながら声を張る。

「ああ! そうだよ!!」

 

酒の力もあると思うが、気分の良いグーハイの目に映るバイロインは、完璧な輪郭、英気が漂う風貌、ご飯を飲み込む動作でさえ美しく見える。

グーハイがこちらをじっと見つめている事に気づき、照れ隠しにグーハイの受け皿を箸で叩く。

「おい!肉を独占してるだろ!」

グーハイの瞳の色が変わり、バイロインの襟を掴む

「肉はいらない。それより、お前のミルクが欲しい」

「...はぁ!?!」

暖かいはずの部屋で全身寒気が走り、咄嗟にグーハイの椅子を蹴っ飛ばす。

「食事中に何言ってんだよ!? この変態! お前のことを鍋に突っ込んでやる!」

転げた椅子を立て直し、大人しく席についたグーハイが野菜を自分の皿に移す。

「インズ、お前と食べてると本当に楽しいな!」

バイロインは動揺してしまう。

昔はどうでもよかった。グーハイのいない八年も我慢できた。...そう、食事という行為は胃のなかに食べ物を運ぶだけの動作。

ーーだったはずなのに...!!

グーハイと再開し、一緒に食事をするようになって、食事をバイロインに作ってくれるようになって、”食事”に色がついてしまった。

ただの”食事”は、いつの間にか”どこで食べるのか”、”何を食べるのか”、”誰と食べるのか”が重要になっていたのだ。

グーハイと喧嘩をして弁当が送られてこなかった間、料理をするのがめんどくさかったわけではない。八年も一人で暮らしてきたのだ、自分の分くらいなんとか出来る。

でも、それができなかった。お腹が空いていなかったわけではない。ただ、独りで食べると行為に食欲が湧かなかったのだ。

前までは苦しいことも我慢できた。しかし、人間という生き物は脆いもので、一度楽しい生活に浸ってしまうと、同じ苦しみでも前には戻れなくなる。

食事の手が止まっているバイロインに声をかける。

「冷凍豆腐くらいは一人でも食べられるだろ?」

バイロインはその言葉で我に返ると、豆腐を水に漬けて元に戻し、調味料をかけて大きく口を開き、一度に全てを運ぶ。

 

「はっ。それくらいなら一人でも大丈夫か」

「当たり前だろ!!」

そう言って、もう一つ取り水に漬す。

グーハイが何か言いたそうな顔をしているのに気づき、悔しくもその意味を理解してしまう。ため息をついたバイロインは、元に戻した豆腐を自分で食べず、グーハイの口へと運び食べさせてあげた。

「どの豆腐より美味しいな」

下を向くバイロインと対照的に、グーハイは満面の笑みを浮かべていた。

 

 

ご飯を食べ終わりお風呂も済ませると、バイロインはクラゲのような格好でだらけてベッドに横になる。

「どうしたんだ?」

髪を乾かし終わったグーハイがバイロインの元へと近づき、その頬を軽く抓って揺らす。

「食べすぎたんだ〜」

「じゃ、マッサージしてやるよ」

グーハイの手は、バイロインの下腹部へと滑り込む。その手を取り上げ、バイロインは自分のお腹の方へと移動させる。

「胃はここにあるんだ。」

「...お前、飲みすぎてもいたからな」

そう言うと再び位置を下の方にずらし、悪戯な手でバイロインのそれを元気にさせてすぐにイかせた。

「グッ...ハイ...!!」

「ほら、飲みすぎてただろ?」

二人とも未成年のうちからお酒を飲んではいたが、年齢を重ねるにつれその量は増していた。今夜も大量に飲んでいた為、普段のバイロインならさせてくれない自慰もされるがままになっていたのだ。

今のバイロインは、いつもより心が弱く、しかし自分の気持ちに素直だった。

後処理をしてくれていたグーハイに、自分の隣のシーツをバシバシと叩いて呼び出す。

「おーい。ここに座れよ」

グーハイもその言葉に素直に従い、手を綺麗にしてバイロインの隣へと座る。

横に座ったのを確認すると、バイロインはその肩に頭を預ける。

ーーッッッ!!...やばい。可愛すぎる...

いつもなら相手からしてくれない行為に思わず天を仰ぐ。目線を下げてみると、隣には愛しい人が。

グーハイはバイロインの頭を撫でる。

最初は優しく撫でていたはずだが、次第にその動きが荒くなり、不快に感じたバイロインは頭を振ってグーハイから逃れようとする。

「待て。動くな。...白髪があるぞ」

その言葉を聞いて、バイロインは大人しくなった。

「あった」

勢いよく抜き、明かりのもとで確認すると、その抜け毛は黒く染まっていた。

「あれ?...黒いな」

再度バイロインの髪を掻き分けて白髪を見つけて抜き、明かりの下で確認すると、それも黒く染まっていた。

「よく見てから抜けよ」

バイロインは何度も抜かれて、それが黒かったと知り怒りが滲みだす。

「いや。すまん。 見間違えかもしれない」

言い終わると、バイロインの頭を自分の肩へと戻し、ついでに手を取って五本の指を絡めて握り 足も擦り寄せ、暫くの間愛を感じていた。

 

「なぁ、グーハイ。...エンって人のことはもういいのか?」

口を開いたのはバイロイン。

「...お前はどうしたいんだ?」

「俺がとかじゃなくて...お前の親父に何か言われなかったのか?」

「言われたよ。けど、誤魔化してる」

バイロインは深くため息をつく

「彼女はいい人だと思うよ....、男性からしたら理想の結婚相手だ」

グーハイはしばらく黙っていたが、バイロインの様子を悟って口を開く。

「お前に送った写真は合成だぞ。」

バイロインもしばらく黙っていたが、急に意地悪な笑みを浮かべた。

「なんで俺がその言葉を聞きたかったって分かったんだ?」

「俺は心なんて読めないさ」グーハイは遠くを見つめながら鼻を鳴らす「ただ、誰かさんが遠回しにぐちぐち言ってくるからな。...嫁の機嫌は取らなくちゃ、だろ?」

それを聞いたバイロインは笑うだけで、特に何も言い返さなかった。

グーハイはエンの写真絡みで思い出し、バイロインの腰を突く。

「そういや、お前のあの”毛”はどこから取ったやつなんだ?」

「...すね毛だよ」

「本当かぁ?」

疑うような視線を向けるグーハイに、難色を示すバイロイン。

「お前を騙して何になるんだよ?」

「じゃあ、どこの毛が少なくなっているのかチェックしないとな!」

スイッチが入ったグーハイがバイロインを揺すり出す。バイロインはそのモードに入りきれず、険しい顔を浮かべる。

「おい!やめろよ!...今ヤったら、吐くぞ!」

その言葉を無視してグーハイはバイロインの服を脱がしていく・

「大丈夫だって。...むしろ食後の運動として消化させてやるよ!」

二人は甘い喧嘩で騒いでいたが、突然のノックで静かになる。

リョウウンの重厚な声が扉の向こうから聞こえてきた。

「バイロイン。寝ているのか?」

二人は顔を見合わせる。グーハイは不満そうな顔を、バイロインは驚いた表情を。

「何でこのタイミングで来るんだよ...」

グーハイがボヤいた瞬間に再度、扉を叩く音が聞こえた。

慌てたバイロインはグーハイをトイレの中へと追いやる。

「おい!何でそんなに俺とあいつを離そうとするんだよ?」

グーハイがバイロインの行為に納得できないと、トイレの中に入ることを渋っていると、バイロインは凄い剣幕で説き伏せる。

「お前が今ここにいる事がバレたら、俺の計画が台無しになるだろ!!...何だ、それとも恋敵が増える事を良しとするのかよ?」

不満は解決していないが、とりあえず納得してくれたグーハイをトイレに隠し、表情を整えて眠そうな演技をしてその扉を開く。

 

「師長、どうされましたか?」

「寝てたのか?」

「寝ようとしてたところです」

バイロインがこの言葉を言ったかと思うと、リョウウンはバイロインの断りも聞かずに部屋の中へと入る。

「ちょっと、どうしたんですか?」

「...お前が”寝ようとしてた”と言ったから、部屋の中に入ったんだ」

意味の分からない言葉に、思考が乱れる。

「では、もし私がまだ眠らないと言っていたら?」

「なら、外で話していただろうな」

「… ...。」

リョウウンは部屋の中を物色する。トイレに近づく度に、バイロインの動悸は激しくなった。

すると、リョウウンはベッドの前で立ち止まり、掛けられていたシーツを手に掴む。

「これは?」

「部下からの押収品です」

「...じゃあ、それを何でお前が使っているんだ?」

「…それは...」

リョウウンはバイロインの言葉を待たずに、そのシーツを自分の手に巻き取って回収する。

「次回からは、押収した物は必ず上納するように」

バイロインは俯いたまま、絞り出すようにして返事をする。

「はい、分かりました。」

 

____________________________

 

凍豆腐ってあれです、レンチンしたら食べられる食材的なあれです(笑)

水に浸したら、元に戻るっぽいです

リョウウンの立ち位置がイマイチ分からない(笑)

もしかして、グーヤンの身代わり作戦がばれたのかな?

あと、リョウウンの呼び名が固定しません〜!師長でいいのかなぁ...軍の制度とか調べても国によって違うし、なんて呼べばいいのかなぁってのが、最近の悩みです...(笑)

 

あと、全ての章にコメントを残してくださる読者様、ありがとうございます!

毎回そのコメントを見るのが楽しみになっています!

:naruse