第52章:恋敵再来
「こんなに寒いんだ、部屋に戻るぞ」
グーハイはバイロインを立たせようとして、腕を引っ張る。
「ほら、話は聞いてやるから。ここは寒い、部屋で話そうぜ?」
しかし、バイロインはグーハイの手を払い除けて頑なにこの場から離れようとしない。
「いいんだ。俺はここで一人、罪を償うんだ。...それに、後でお前に怒られたくない。」
グーハイはバイロインがただならぬ罪悪感を抱いているのだと悟り、身をかがめて優しく頭を撫でる。
「分かった。じゃあ、こうしよう。...お前が俺に素直にその罪とやらを話すんだ。そして、俺はそれをちゃんと吟味したうえで許すかどうか考えてやる。...もし許したら、その時は一緒にベッドに戻ってくれるよな?」
バイロインは沈黙を貫いていたが、俯いてから暫くして絞り出すような声で罪の告白をし始めた。
「実は...あの料理、わざと不味く作ったんだ...」
グーハイの表情が変わった。
本音を言うとあの料理はクソ不味かったのだが、バイロインが作ってくれたと言うこともあり、グーハイは水で口の中のものを押し流すといったこともせずに全てを食べた。
そんなことが出来たのも全てはバイロイン“が”グーハイの“為に”作ってくれたからである。
だが、その不味さの塊でできた料理はバイロインの告白によって、わざとだったと判明する。
「そんなことかよ!」
グーハイは笑いながらバイロインの腕を掴んだ。
「もっとやばいことかと思ったぜ!...いいって、そんなの許すに決まってるだろ?お前“が”作ってくれた料理だ。どんなものでも、嬉しいに決まってる!」
グーハイの許しを得たバイロインだったが、まだ暗い顔をして立とうとしない。
「実はな、料理を不味く作った理由は...お前があの女から薬をもらったってのが、一番大きな理由だったんだ...」
グーハイは二人の間の話にエンの話題がいきなり入り込んだので、表情を曇らせる。
「あいつが薬を買ったのと、お前の料理と何の関係があるんだよ?」
「お前の額の傷...俺には言えないで、あの女に傷を治してもらおうとしてたって勘違いしたんだ」
バイロインは未だにグーハイのことを信じない癖がある。その癖に毎度頭を悩ませていたのだが、今回ばかりは原因が自分にあったと後悔した。
ーーしくじったな。ちょっと嫉妬させたかっただけなのに、ここまで傷つけてたのか...
「オーケー。分かった。...そうだ、お前が俺の食事の様子を撮影したやつあったろ?実はな、それ保存してんだよ」
グーハイは八重歯が特徴的な綺麗な歯を並べて、暗闇でも映える笑みを浮かべる。
「お前の罪の償いとして、今度何か喧嘩した時はそれを脅しの材料にでもさせてもらう。それでいいだろ?」
こうして初めての手作り料理の食事シーンは、グーハイは神聖かつ幻想的な美しい時間として、バイロインは後悔と無数の罪悪感の時間として、細かくフレームを刻む一つの淡い記憶として、まるでウォール街のウルフのように記録された。
今回のように優しく許して包み込むだけではなく、さらに慰めをいれる心の広さを持つことが出来たのは、相手がバイロインだからだということを忘れてはいけない。
「これに限ったことじゃないが、お前が素直に俺に話してくれさえすれば、なんでも許してやるさ!...ほら、部屋に戻るぞ!ここにいたら寒くて凍えちまう」
バイロインも「そうだな」と立ち上がった瞬間、ふとあることを思い出してはついでとばかりに古い罪を打ち明ける。
「そうだ、俺が自分で料理を作ったのは今回が初めてじゃなかったんだった...」
グーハイの動きがピタリと止まり、ゆっくりとバイロインの方を向く。
「あと...その料理を食べたのはお前の兄貴だったな」
「…....」
「それに、今回より上手く作れてた」
「….....」
バイロインは全てを出し切ったと満足そうな顔を作る。
「じゃ、寝ようぜ!」
グーハイの脇をすり抜けようとした瞬間だった
ドンッッ!!!
冷たい表情をしたグーハイの手によって、窓へと押しつけらる。
「座れ!!!」
グーハイの雰囲気は急に不穏なものになっている。あれだけ優しかった先ほどまでの穏やかさはどこにもなく、赫く染め上げた瞳で見つめ迫られる姿は、バイロイン出なければ卒倒してしまうほどの怒気が込められていた。
「な、何だよ?」
まさか最後の言葉でここまで怒るとは思いもしなかった。
先ほどの流れから打ち明ければ、そのまま許されると思っていたばかりに、ここまで怒りに満ちているグーハイを見るのが久しぶりで少し足が竦む。
「話せば許すって言っただろ?!」
バイロインは先ほどのグーハイの言葉を借りて反撃に出る。
「あ?」今のグーハイには通用しない様子だ「お前、まだ何か隠してるだろ?!おい!...なんとか言えよ」
「別に食べさせようと思って作ったんじゃない!勝手に食べられてたんだ!」
グーハイのお怒りが収まる様子は感じられない。
「勝手にとか何とかは関係ねぇよ!...あいつにお前の料理が食べられた。それが一番の問題なんだよ!!」
人はここまで一瞬で変わるのか、グーハイの雰囲気に先ほどまでの優しさは感じられない。ゴツゴツと男らしく太い指で床を指すが、意志の強い目でグーハイを見つめるバイロインに痺れを切らす。
「座って反省しろって意味だよ!!」
頭を押さえつけて座らせようとするが、タイミングを合わせて潜り抜けたバイロインはそのまま寝室に向かって大股で逃げていく。
寝室の入り口に立って後ろを振り返ると、鬼の形相をしたグーハイがベランダから室内に入ってきていた。
「おい、俺の許可なしにこの家から逃げようだなんて考えるなよ?...今夜はお前と話し合わないといけないみたいだしな!」
結局、先ほどまでは怒りで支配されていたグーハイも数十分間バイロインのことを眺めているだけで、お花畑な脳内にすっかり変わってしまっていた。
一応、罰として半裸状態にして座禅を組ませているが、その後ろ姿につい見惚れてしまう。
誰もが羨むスタイルの良さ、並大抵の努力では身につかない隆起した筋肉、女性が羨むほどの美脚。
特にグーハイが魅力的に感じてしまう箇所は、上半身の胸部に存在する淡いピンク色をした突起部分。
ーーやべ。...勃ったかも
この数日間、グーハイはバイロインの傷を治す為に薬を毎晩塗っていたのだが、美味しそうな部分を見せられながらお預けを喰らうのは、健全な男性として辛いものがあった。
「もういい、早く服を着ろよ」
そう言いながらグーハイは部屋の外へと出ていく。
「なんで出ていくんだよ...」
ぶつぶつと文句を言いながら寝巻きに着替え、先にベッドの中に潜り込むが、長い時間空にしていた為か記憶にある暖かさは失われていた。
グーハイは十五分もしないうちに部屋に戻ってきたが、出ていく前と比べて少しだけ顔が赤いような気がする。
これはグーハイの作戦で、ただでさえ体温が低くなったバイロインを半裸にして苦しめた後、体を温めてきた自分に抱きついてもらおうという寸法である。
グーハイがベッドの中に入ると、さっそくバイロインが身体を擦り合わせてきた。
「...ん。温いな」
「じゃ、もっと暖めてやろうか?」
欲に忠実なグーハイは、バイロインのパンツの中へと手を滑り込ませていく。
「おい!完全に治るまで触らないって約束だったろ?!」
グーハイは小指をピンと立て、意地悪な笑みを浮かべて誓いをたてる。
「ああ、お前の“モノ”には触らなくても“ソレ”を気持ちよくさせてやるよ」
結局のところ約束というのは脆いもので、グーハイの気分次第でどうにでもなるような内容だったらしい。
グーハイが指をゆっくりと一本ずつ引き締まった二つの山の間に這わせ、その谷へと挿入していく。
「おい、まじで久しぶりだな。またキツくなってねぇか?」
「んッ...ちょっと、確かに....」
バイロインは今までを振り返ってグーハイと最後にそのようなことをしてから、十日ほど経っているのを思い出す。
指の段階で少し違和感を感じるのに、勢いに任せたグーハイの巨根を受け入れると大変なことになってしまう。
ーーそれはまずい...グーハイのペースに持っていかせないようにしないと
グーハイに時間を与える為にバイロインは首を捻ってグーハイに口付けをする。
グーハイをそれを数回受け入れた後、そのまま上部から這うようにキスを落としていき、内腿付近を執拗に弄られる。
「んんッ!...グー...ハイ!」
ちびインズはすでに興奮しており、下着を着たままの状態で大きなテントを張っていた。
グーハイは敏感な箇所を突くだけで、特別下着を脱がせたりその穴へは干渉してこない。しかし、バイロインはそれだけでも湧き上がってくるものがあり、数分後には筋肉が痙攣して自らグーハイにソレを懇願する。
「お願いだ..!触ってくれよ!」
グーハイが少し獲物に触れただけでも、バイロインは腰が浮いて濡れた声を漏らしてしまう。
「グーハイ!...早く...!」
「...いや。だめだな。お前が触らないでもイケたら続きをしてやるよ。それまでは我慢してろ」
グーハイからの提案はドライオーガズムを強要するものだった。普段のバイロインなら怒りに身を任せて手を出していたところだが、コントロールされている今の状態ではただの性的不満にしか感じない。
グーハイが不満そうな顔でこちらを見つめるバイロインに気づき、己の支配欲が疼き出す。
「おい、パンツの上から俺が舐めて...それでイったらどうなるか分かってるよな?」
そう言ってグーハイは、バイロインの硬くなった竿を執拗に弄り出す。バイロインは必死に絶頂を我慢するが、抗えぬ快感にその身を捩る。
我慢ができなくなったバイロインは自分で慰めようと手を伸ばすが、グーハイによってその行為を中断させられる。
「何しようとしてんだよ?...悪い子だな」
パンパンに張った下着を脱がせると、力強く脈を打つ愛しい存在がグーハイの目の前に姿を見せる。
グーハイはまるで宝石を見つめるかのように、下品な視線は一切感じず、純粋な感情でバイロインのそれを凝視する。
バイロインは恥ずかしさで気が狂いそうだったが、ここで何かアクションを起こしてはもっと酷い目に合うかもしれないという不安が付き纏い、腕で顔を隠すだけで大人しくする。
グーハイの形容し難いバイロインに向けられた感情は、既に絶頂を迎えていた。
バイロインとのセックスは別に初めてでもないし、お互いの扱き合いなども何度か行なってきている。しかし、今のこの状況は特別に感じていた。
ーーここを一度も触っていないのに、ここまで感じるなんて...こいつ、どんだけエロい体してんだよ!
グーハイは興奮した己を止めることなど今更出来ず、バイロインの両手を頭の腕で押さえつけて、開脚させた状態に保つ。
「もう我慢できねぇ!」
バイロインはサッと血の気が引く。今の未完成なホームでは、グーハイの暴走列車を受け入れることなど出来ないと経験が警鐘を鳴らす。
「む、無理だ!やめろ!」
バイロインから拒絶されてもグーハイはショックを受けず、むしろ笑みを深めて頷く。
「分かってる、どんだけ興奮しててもお前に痛い思いはさせないさ」
グーハイはそう言ってベッドから立ち上がり、近くの棚に歩いて何かを取り出す。
「お前の拡張工事のために、最適な道具を持ってんだ」
バイロインはグーハイが手に持つ道具を見ると、嫌な記憶がフラッシュバックして思わず鳥肌が立つ。
「お前!!...まだそんな物を持ってたのかよ?!」
「大丈夫だ、今度こそお前に合うって保証する」
グーハイの言葉に偽りはなく、本当にこの時のために何度も改良を重ねて事故のないように完璧な製品を開発していた。
バイロインに善くなって欲しい。その一心で開発された最新型のマルチ機能玩具
グーハイはスイッチをつけて敏感な箇所を刺激すると、バイロインは前回のトラウマとそれを超える快感に挟まれて、正常な判断が出来なくなっていく。
「うっ!なんか、これ...ヤバイ!」
バイロインが自分が堕とされる未来が見えてそれから逃れようとするが、グーハイに追い詰められてベッドの隅で観念する。
その機械は本当に多機能で、男性としての快感を得るためだけではなく、後ろの開発にもその他の性感帯刺激にも、優れた性能を発揮していた。
「これ...嫌い..は...なせ…!」
口ではそれを避けようとするが、身体は素直にそれを求めているバイロインの様子に思わず笑ってしまう。
「こんなに気持ち良くなっているのに、本当に要らないのかよ?」
再度、穴の開発を進めようと押しつけるグーハイだったが、いつの間にかグーハイの手でというよりは、バイロインが自ら腰を押し付けてそれを感じているようになっていた。
普段のグーハイならそれさえも楽しんでいたが、長い間バイロインのものに触れていない期間があり、こんな良い反応をするバイロインを見て機械にさえ嫉妬してしまう。
「ンンッ...!!」
バイロインが自分で気持ち良く感じるポイントを見つけたのか、色気が倍増してグーハイに襲い掛かる。
「やめろ!あとは俺がやる!」
バイロインが掴んでいた機械を奪い取り、ベッドの端に投げ捨てて自分の指を入れて遊び始めた。
グーハイがバイロインの為に制作した叡智が詰まった技術は、確かに一級品だった。
グーハイが自分でバイロインを弄り始めてからというもの、先ほどまでの色気は鳴りを潜めていた。
「おい?どうしたんだよ」
「お前の手よりかも、さっきのおもちゃの方が倍 気持ちいんだよ!」
「は?」
バイロインはおもちゃを拾うと、それを使って自分で自分を弄り、グーハイのパンパンに膨れた怪獣を口に含む。
グーハイはバイロインの頭を掴んで自分のものに押し付けながら掠れた声で「ベイビー、もっと強く吸ってくれ」と注文をつける。
バイロインが指示通りにキツく吸い付けると、グーハイから甘い吐息と声が溢れ出す。
自分のものを一生懸命口に咥えるバイロインをみると、先ほどのおもちゃを使って自分のお尻を弄っている様子。
グーハイのモノでも入るようになっただろうその穴を想像すると、余計に盛ってしまう。
呼吸が浅くなり、バイロインの頭を抑える力が次第に強くなっていく。数回に一度はえずきながらも懸命にグーハイのものを咥えるバイロインを見ていると、余計に苛めたくなる自分の加虐心が燻り、それと同時にバイロインを大切にしたいという庇護欲が働き、自分の汚さに銃を突き付けたくなる。
バイロインは口が疲れたのでグーハイのそれを抜き出すと、いいところで手放されたちびグーハイの口からは長い糸が垂れていた。
それを丁寧に手で扱き、グーハイは一度目の絶頂を向ける。白い粘り気のある液体は、バイロインの口元へと飛来する。
今、出したばかりだというのに全く衰える気配を見せない怪獣を保有するグーハイは、先ほどからずっと自分で弄っているバイロインのケツからそれを抜き出し、自分のそれを入り口で撫で回す。
「ほら、何が欲しいんだ?...自分の口でねだってみろよ」
バイロインは何を言わそうとしているのか、それが自分にとってとても屈辱的なものだと悟り、頬を膨らませて顔を朱く染める。
「やっぱりあれが欲しい!」
おもちゃを欲しがる子供のような明るさで言い放つと、グーハイに取り上げられていた玩具を奪い取る。
「....は?!?」
グーハイは自分が道具に負けたと思い、焦った表情を浮かべる。
「だ、だめだ!」
バイロインからそれを再度奪い取り、自分のものをバイロインの体内へと侵入させる。
「おい...やっぱり本物の方がいいだろ?」
乾いた破裂音が静かな夜の部屋に響き渡る。
バイロインの腰を押さえて自分のものを出し抜きし、長年の経験からバイロインが欲しがるポイントをひたすらに刺激してやる。
流石にこの自分を知っているからこそ出来る長年の芸は、機械には真似できない。濡れた前髪を額に張り付かせて、グーハイを焚きつける艶のある声をあげる。
既にグーハイによってバイロインは快楽の渦に囚われていた。
「本当にされて嬉しいのはどっちだよ!?」
「そッ...れは!....お..ま.......!」
「ああ?!ちゃんと言えよ!」
「....グーハイ!お前だ!」
その言葉を聞いて満足したグーハイは、ピストンをさらに早めて強烈な衝撃をバイロインに浴びせる。何回目かの衝撃の後、バイロインに抱きついて二人は絶頂を迎えた。
今回の営みは二人の関係にとって発展のあるモノになったと思う。なぜなら、バイロインはグーハイの言いつけ通り一切自分のモノには手を触れず、後ろのみで快楽の味を覚えてしまったから...
グーハイにとって一番美しいと感じる“音”は、バイロインが最高潮になった瞬間に言った“グーハイ”という単語である。
どんな素晴らしい音色を奏でるオーケストラでも、どんなに世界から称賛されるシンガーの歌声でもない。バイロインの声こそが最高の“音”なのだ。
いい気分なままグーハイの肩に頭を預けるバイロイン。
「これは良かったな」
そう呟いたバイロインに反応し「やっぱりそうだろ?」と自分のテクニックを自慢しようと隣を向いて、固まってしまう。
バイロインが“良いな”と呟いていたのは、グーハイのテクニックではなく彼の手に持つ“恋敵”であった。
「お前の会社も、たまには良いやつ作るんだな!」
笑顔でこちらを向くバイロインに合わせてグーハイも笑みを浮かべる。
「か・え・せ」
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*ウォール街の狼
これはアメリカの映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のことだと思いますが、詳しい前後関係はよくわかりませんでした。
自己解釈ですが 主人公の急なサクセスストーリーと転落する様の対比で表現しているのかなと感じました!
お話に関する注意ですが、表現する上で語彙力ないので結構直接的な(濡れ場での)表現がこれから増えていくと思います!ご了承ください。
コメントなんですけど、長文で感想などを書かれるととても嬉しいですし、毎回残してくれる方も本当にありがたいです!
ここに辿り着いた方がよく感謝のコメントを残していくのですが、それと同じように僕もいろんな人と出会えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします。
:naruse