NARUSE'S:BLOG

ハイロイン/上癮:Addictedの原作小説を和訳している男子大学生でした

第119章:波乱の幕開け

シーフイとの食事を終え、二人は家に帰ってきた。

バイロインはシャワーを浴びに行き、グーハイはソファーに座り果物の皿に並べられたブドウの房をじっと見ている。

 

バイロインがシャワーから出て、グーハイを見ると、彼は先ほどと変わらぬ姿勢のままでいた。ただ、果物の皿を持っており、皿の上のブドウはグーハイによってすべて握りつぶされおり、赤紫色の汁が床にいっぱいこぼれていた。

バイロインにはグーハイの考えていることがすぐ分かった。

小さく悪態をつき、そのまま寝室のドアを開けて中に入ろうとした。

「戻ってこい!」

グーハイはそう言いながら突然テーブルを叩いた。

バイロインは寝室の入り口の手前で立ち止まり、グーハイをチラッと見て冷ややかに聞く。

「お前、何してるんだよ…」

 「ちゃんと説明しろよ」

グーハイはシーフイが話していた”ブドウ園での出来事”について言及した。

「おい、何を説明するっていうんだよ。俺たちは付き合ってたんだぞ。そういうことをするのだって当たり前だろ。お前は何か言う資格があるのか。お前だってジンルールーと寝たんだろ?お前がそんなこと言うならお前のモノを切ってもいいのか?」

この正論にはさすがのグーハイも反論することができなかった。

 

 

ベッドに入ってから夜の11時が過ぎた。バイロインは疲れきっており、目を閉じていたが、二本の足がバイロインの体を何度もこすったり、ゆすったりしてくる。

さすがに痺れを切らして「ちゃんと寝かせてくれよ!」と怒鳴りつけた。

グーハイはバイロインの頭を自分に向けさせる。

真っ黒な瞳が瞬きをする度に恐ろしく光っている。

バイロインはグーハイの腕の強く握り、怒鳴る。

「お前は俺の話をちゃんと聞いていたのか?俺はいつもお前に話すべきことは話してきただろ?」

 「お前はいつも俺に対してそんな態度だよな!」

グーハイは怒りが収まらず、もう少しでバイロインを殴るところだった。

「別に俺は誰に対してもこんな態度だろ?」 とバイロインが反論すると、

「あの女に対してはそんな態度してなかっただろ!」とグーハイは怒鳴った。

バイロインは帰宅したら面倒なことになると覚悟していたが、やはりグーハイは怒っていた。

バイロインは弁明する。 

「俺の彼女に対する気持ちはわかるだろ?彼女が教室の外で待ってたから一緒に食事に行った。でも俺は彼女に料理を取り分けたか?車に乗るときに彼女をエスコートしたか?してないだろ」

グーハイはバイロインの目をじっと見つめながら言う。 

「俺がいなければしてただろ」

バイロインはカッとなってグーハイの胸を殴った。

「出ていけ!」 

「お前、俺を追い出すのか?」

グーハイの肘がバイロインのお腹を押す。バイロインはグーハイのふくらはぎを蹴りつけ、怒鳴る。

「ああ、追い出してやる!お前みたいな理不尽な奴とは一緒に寝たくない!」

グーハイはバイロインのシャツの襟を掴み持ち上げ、質問する。

「そうか、お前は俺と寝たくないんだな?あの女と寝たいんだろ?あの女とヤリたいんだろ?」 

バイロインは全身の血液が沸騰する感覚がした。我慢の限界だ。グーハイの顔にパンチを入れる。

とても強い力で殴られたグーハイは、自分の鼻と同じくらい心に痛みを感じ、シーフイに対して心の中で言った。

――なんて酷いことをするんだ?

俺は誰に殴られた?俺の拳は一生バイロイン、お前一人のためにあるんだぞ。

 

グーハイの歪な考えのせいで二人は取っ組み合いになった。

二人とも本気で殴り合った。しかし、バイロインの殴る力のほうがやや重かった。グーハイの言葉があまりにも無神経であったからだ。

グーハイが何も言わなければ、バイロインは数回殴った後、殴るのをやめたかもしれない。しかし、グーハイはバイロインを刺激し続け、最終的にバイロインは怒って、グーハイの股の間を蹴り上げた。

この一蹴りでグーハイは激昂し、目を充血させ立ち上がり、部屋の出口のほうに顔を向けた。

バイロインはヒヤリとして、さっと立ち上がり、グーハイのことを掴んだ。

「離せ」

グーハイは冷たく言い放った。

バイロインはこの言葉に動揺したが、グーハイのシャツの襟を掴み、必死に彼を持ち上げて、ベッドに押し倒した。

グーハイの体に覆いかぶさり肩を掴む。バイロインの息は切れ、額からは汗が滴り落ち、それが全部グーハイの はだけた胸に落ちる。

二人はお互いに見つめ合うが、どちらも口を開かない。

 

長い沈黙の後、バイロインはいきなり全身の力を抜き、グーハイの体の上に倒れる。頭はグーハイの肩に置き、髪は乱れ、頬の汗はグーハイの胸にこすりつけられている。

心臓は激しく鼓動し、聞き取れるほどだ。

「グーハイ、お前の中でこの俺はそんなしょうもない奴なのか?」

グーハイの強張った体がその言葉でいくつか緩んだ。実のところ、バイロインに持ち上げられた時にはすでに彼の心はマシュマロのように柔らかくなっていた。

 バイロインが悲しそうに質問をしているのを聞き、さっきの怒りの感情はどこかに消え失せていた。

バイロインの頭を優しく撫でながら答えた。

「違う」

「じゃあさっきのはなんなんだよ?」

グーハイは正直に言う。

「わからない」

「なあ、俺のことを信用してくれるか?」

バイロインは質問した。

グーハイはそれに対しては答えず、バイロインの頭を引き寄せ、その薄い唇を閉じた。

 

唇同士のぶつかり合いの間にバイロインの誠意を感じた。

本当は無条件にバイロインのことを信じ、彼の人柄を信じて、彼の行いを信じ、自分の目が間違っていないということを信じている。しかしなぜわざわざ反発するのか、彼自身はっきりと答えがわからない。

 

三十分後、二人は何もなかったかのようにベッドに入り、恥ずかしそうに抱き合いながら眠りについた。 

 

 

次の日、バイロインは早起きし、ヤンモンがいる教室に直行した。

ヤンモンは出てくると目に驚きの表情を見せ、バイロインの肩を叩く。

「珍しいね、どうしたの?」

バイロインはヤンモンを教室の隅へと引っ張り、問いただす。

「お前、俺の電話番号をシーフイに教えたか?」

ヤンモンは立ち止まって聞き返した。

「え、なんでいきなりそんなこと聞くの?」

バイロインはヤンモンの様子を見て、間違いないと思い、ヤンモンの頭を三回続けて叩いた。

「この野郎…シーフイが帰国してきたんだぞ!」

「え、嘘でしょ?」

ヤンモンは非常に驚いている。

「か、彼女が…まさか帰国したの?」

バイロインは怒りに満ちた表情で怒鳴りつける。

「お前のせいだろ!」 

「インズ、君はすごいよ。電話一本で彼女を呼び戻しちゃうなんて、本当に大した腕だね!」

ヤンモンは笑いながらバイロインの肩を叩く。

「僕にお礼を言いに来たの?」 

「畜生!ありがとな!」

皮肉を言いつつ、バイロインはイライラしている。 

ヤンモンは相変わらずニヤニヤしている。

バイロインはため息をつき、険しい顔つきで教室から出ていく。

ヤンモンはバイロインが本当に困っている様子にやっと気が付き、追いかけて説明する。 

「本当は僕も教えたくなかったんだよ。でも彼女は泣きながら必死に僕に聞いてきて…どうしようも無かったんだよ…」

バイロインは再びため息をつきながら立ち止まり、ヤンモンに聞いた。 

「お前、彼女に何を話した?」 

「いや、何も言ってないよ。君の最近の状況を聞かれたからそれに答えたんだ。あ、そうだ。あと君がグ少将の義理の息子になったって…へへへ…」

バイロインの顔は青ざめていた。この裏切り者は恐れることなく話し続ける。

「インズ、大丈夫だよ、二人は仲直りできるよ。彼女が君のために帰国したのならもう問題ないじゃん。だって遠距離のせいで別れたんでしょ?もう遠距離じゃないし、また付き合えるよ」

「彼女と別れた原因は距離じゃない。もともと合わなかったんだよ」

「何がダメだったの?」

ヤンモンは目をパチパチさせている。

「家庭の事情が違うから?今は何も変わらないじゃん。彼女のお父さんが役人でも、インズのお義父さんは少将なんだからもっと偉いじゃん」

バイロインは手を少しあげて弱々しく言う。

「いい…もういい…」

 

自分の教室に戻ると、バイロインの携帯がカバンの中でしきりに揺れていた。取り出すとメールが届いている。シーフイからだ。

『明日の午後は空いてる?出かけましょ、あと数日で戻らないといけないの』

バイロインは考えることをやめ、そのまま携帯を後ろのグーハイの席へ放った。

 

 グーハイが席に戻ってくるとバイロインの携帯が置かれていた。

――そのまま帰ってくれよ…

メールを見てうんざりした。

――インズ、お前はわざとこの“難題”を俺に投げたんだな…もしこれに反対したら俺はお前を信じないことになる。俺が同行しないように、わざわざ俺がOKするよう仕向けたな…

 「グーハイ、戻ってきたか?」

バイロインは聞いた。

グーハイは恐る恐る聞いた。

「インズ、行きたいのか?」

バイロインは正直に答える。

「ああ、行きたい」

グーハイは強張った笑顔で返す。

「じゃあ行って来いよ。人の好意を無駄にするなよ」

それを聞き、バイロインはいやらしく笑う。

「じゃあ、お前が返信してくれよ」

 

グーハイは携帯に「いいよ」という文字を打つことがこんなにも難しいとは思ってもいなかった。この気持ちは自分の息子を戦場に送ることに等しい。彼が返ってくることよりも一番大事なことは、自分が命をかけて彼の帰りを待つことである。

 

メールに返信した後、グーハイは携帯をバイロインに返した。

「インズ、俺はお前を無条件で信じているからな」

バイロインの口からは思わず笑みがこぼれる。そして、「ありがとう」 と返した。

 

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ドラマではヤンモンとバイロインたちは同じクラスのはずなんですけど、原作だと違うクラスみたいですね。 

しかし、グーハイの不器用だけど、バイロインを愛しているという大きく芯のしっかりとした振舞いに男を感じますね。

 そしてバイロインの”嫁”感がこれまた可愛いんですよね。

無条件で信じてるって言われて思わずニヤけちゃうインズすこ。

 

:hikaru