NARUSE'S:BLOG

ハイロイン/上癮:Addictedの原作小説を和訳している男子大学生でした

第121章:愛する人をかけた宣戦布告

グーハイが急いで家に帰ると、バイロインは荷物をまとめていた。

バイロインが無事であることを確認し、グーハイはひとまずホッとする。

バイロインが服や洗面用品などをカバンにしまっているのを見て、グーハイは焦る。

「なぁ、何してるんだ?」

バイロインは返事をせず、こちらに顔を向けようともしない。

そして相変わらず荷造りを続けている背中に冷たさを感じる。

グーハイはバイロインに近づき、腕を掴み無理やりこちらに振り向かせた。

バイロインの顔を見た瞬間、グーハイは言葉を失う。

二つある眼は左右非対称になるほど大きく腫れ上がっている。鼻も全体的に腫れており、鼻翼はいたるところが内出血している。首にいくつかの血の痕があり、シャツの襟で見えなくなるところまで垂れている。

しかし、二人の兵士は確かにバイロインに暴行をしたが、幸いにもバイロイン自体やわでは無かったため、報告で聞いていたほどの酷さではなかった。

「インズ…」

グーハイは声から心の痛みを隠すことができなかった。

バイロインのシャツのボタンを開けようとしたが、バイロインが即座にそれを強く拒み、蔑むように言い放つ。

「わざとらしい顔してんじゃねえよ、気持ち悪い」

グーハイは胸に剣を突き刺さされたかのように感じた。バイロインはグーハイの震える手をあっけなく払いのける。グーハイにはもうその手を動かす気力も残っていない。

バイロインが部屋から出ていくのをじっと見つめることしかできなかった。

バイロインはカバンを持って、玄関に行き靴を履く。

グーハイはぐちゃぐちゃになった気持ちを抑え、急いで玄関に向かい、ドアの前に立ち、バイロインをじっと見つめながら聞く。

「なぁ、どこに行くんだ?」

「どこだっていいだろ。お前には関係ない」

「…家に帰るのか?」

グーハイは続けて質問する。

バイロインははっきりと告げる。

「こんな怪我した状態で家に帰るなんて恥ずかしくてできるわけないだろ」

「じゃあどこに行くんだよ…」

バイロインは冷たい目つきでグーハイに詰め寄る。

「もう一度言う。俺がどこに行こうがお前には関係がないんだよ」

グーハイの心は一気に苦しくなる。

「もしかして、あの女のところに行くのか…?」

バイロインは嘘つきで冷酷かつ理不尽なこの男の顔をぶん殴ってやりたくなったが、それをやめた。こんなやつのために殴る手間すら惜しいと感じた。

「ああ、そうだ。シーフイのところに行くんだよ」

悲しみ、憤り、悔しさ、後悔…全ての感情が胸に湧き上がる。

「お前が…あの女を帰国させたのか?」

バイロインはカバンの取っ手を握りしめ、歯を食いしばり、感情を抑えてから答える。

「ああ、そうだよ」

「じゃあ…あいつは中国に残るのか?」

「ああ。もう質問するな、全部お前の言うとおりだよ。本当はな、ここに住んでいたときも毎日彼女に電話してたんだよ。俺は心の中でいつも彼女のことを考えている。お前は二人の兵士を使って俺たちを監視させてたが、おかげで本当のことを伝えることができて清々している。二人の兵士が殴りに来ってきたが、気持ちはスッキリしているよ。グーハイ、もう話すことは何もない!」

 

グーハイは魂が抜けたかのように無表情で立ち尽くしている。目も虚ろとしていて、感情がすべて無くなってしまったかのようだ。

「そこをどいてくれ」

グーハイの固まった目がゆっくりとバイロインの顔に移る。

「お前が今言ったことは…全部本当なのか?」

バイロインは傷だらけの口元に笑みを浮かべながら冷酷に言い放つ。

「俺が本当のことを言っているかどうか、まだわからないのか?」

グーハイは口をつぐむ。

「どけよ」

グーハイは微動だにしない。バイロインはグーハイを押しのけて、ドアを無理やり蹴り開ける。そしてそのままエレベーターの中へと消えていった。

  

外は北風が吹きすさみ、バイロインの体は芯まで冷えていた。

胸がとても苦しく、呼吸さえ重く感じた。

こんなにも失望したことは今までに一度もない。たとえ彼をなぶり殺したとしてもこの気持ちは晴れないだろう。

ーーなんで俺のこと、信じてくれないんだよ…お前が俺のこと信じているって言ったのに、なんでなんだよ…俺がお前に期待しすぎだっていうのか?

ーーお前は俺に対して本当に良くしてくれた。だからお前の欠点なんか見えなかった。お前の本心を知って、俺がどんなに辛いかわかるか?

 

 

それから三日間、バイロインは学校を休んだ。期末試験の勉強をするためにホテルに籠っていた。

その後、二日間かけて行われた期末試験をグーハイとバイロインは別々の会場で試験を受けた。試験が終わった後、バイロインは教室には戻らなかった。グーハイも同じように教室には戻らなかった。

そうして二人はあの一件以降、会うことのないまま冬休みが始まった。

 

バイロインは依然として家に帰っておらず、きちんとした治療もできていないため、顔の傷はまだ治っていなかった。

バイロインは帰りたくなかった。あと数日間は静かに過ごしたいと思っている。 

バイハンチーが電話をしてくる度に、バイロインは父を安心させるために「自分はグーハイと一緒にいる、あと数日で帰るよ」と嘘をついていた。バイハンチーは二人の息子が一緒にいるなら安心だ、とそれ以上は何も聞かなかった。

 

 

期末試験が終わってから二日後、シーフイがグーハイの家に尋ねてきた。

「ねぇ、グーハイ。バイロインがどこにいるのか知らない?」

一週間一度も開くことのなかったグーハイの口が開く。

「お前と一緒にいるんじゃないのか?」

シーフイは少し笑い、「そうだったら良いんだけどね、もう一週間も彼に会っていないの」と答えた。

グーハイは驚きのあまり、思わず大きな口を開けた。やはりバイロインは嘘をついていたのだ。

「それなら、あいつの家に帰ったんじゃないのか?」

シーフイは首を横に振る。

「いいえ、私、彼の家に行ったの。そしたら彼のお父さんにあなたと一緒にいると言われたわ」

グーハイの顔つきは険しくなり、家から飛び出そうとした。それに対してシーフイは優しい声で言う。

「心配しないで。彼は賢いんだからきっと大丈夫よ」

「なぁ、ここにあいつが居ない以上、俺たちにこれ以上話すことがあるのかよ?」

「ええ、あるわ。あなたに会いに来た理由はこれだけじゃないの」

ーーなんだ?インズに関係あることか…?

グーハイはその可能性を捨てきれず、とりあえず座ってシーフイとの話を続けた。

シーフイはグーハイの目つきが険しいことに気づく。美人であるシーフイに対して、ここまで冷たい目をした男は今までいなかった。

「ねぇ、あなたは私のことが嫌いなの?」

グーハイは素っ気なく答える。

「別に好きでも嫌いでもない。お前のことは興味がないんだ」

「じゃあ、あなたが私のことを好きになってくれるよう努力するわ」と言い、シーフイは笑った。

「いいから早く本題を話せよ」

グーハイがそう言うと、シーフイの顔から笑顔が消える。

「お願いがあるの。バイロインのことを説得して、私たちの復縁に協力してほしいの」

ーーインズを説得して復縁に協力してほしいだぁ?あんた完全に勘違いしてやがるな。

グーハイは心の中で皮肉を言いながら、答える。

「無理だ、諦めろ」

シーフイはそのあまりにも冷たい言葉に目を潤ませる。

「ひどい…どうしてよ…」

「あいつはもうお前のことが嫌いなんだよ」

バイロインと一緒に住んでいるグーハイの言葉は、シーフイとってバイロインから直接言われるのと同じくらいの衝撃があった。いくつか思うことはあるが、バイロインの親友であるグーハイがわざわざ自分を騙す理由などないはずだ。

シーフイは唇を強く噛みながら、暗い顔をしている。

「じゃあ……彼は今、好きな人はいるの?」

グーハイはきっぱりと答える。「ああ、いるよ」

シーフイの顔色は余計悪くなる。

「好きな人ができたっていうのは本当だったのね。じゃあ、その人が誰なのか教えてくれる?」

「今、お前の目の前に座ってるよ」

シーフイは慌てて周りを見渡すがここにはシーフイとグーハイ以外は誰もいない。シーフイがキョトンとしているとグーハイが急にテーブルを叩いた。

「おい、どこ探してるんだよ。ここにいるだろ。俺だよ」

シーフイは思わず震える。

ーーバイロイン、あなた男が好きなの!?まさかそんなことってあるの?

ゲイの人たちについて、存在自体は知っていたが、まさかバイロインが男を好きだなんてとても信じることができなかった。

「あなた…私のこと、からかっているの?」

グーハイは至って真剣な顔をしている。

「俺がからかっているように見えるのか?」

グーハイは容赦なく追い打ちした。

「今あいつはここにはいない。ここでこんな下らない話をしている場合か?」

「じゃあ聞くけど、なんで彼は突然いなくなったのよ?」

「それは俺たち二人の問題だ。お前には関係ないだろ」

すると突然、シーフイが笑い出す。そして話始める。

「バイロインがあなたのことを好きなはずがない。彼があなたに抱くその異常な感情は私がいなくなったせいよ。彼の心に空いた穴を埋める人が必要だったのよ。でも今、私が帰国してきたんだからもう必要ない。あなたもすぐにバイロインが私のことを好きだとわかるわ」

「お前、すげー想像力だな」グーハイは顔色を変えず言った。

シーフイはまた笑い、反論する。

「想像じゃなくてこれはすべて事実よ。バイロインはとても賢い人なの。彼はちゃんと自分の考えを持っているし、本当に男を好きになるなんてこと、有り得ないわ」

それを聞いてグーハイはにっこりと笑う。

「なあ美人さん。俺はあんたのことを少し見くびっていたみたいだな」

シーフイはカバン持って立ち上がり、グーハイのそばまで行き、赤くて柔らかな唇を微かに開いた。

「あなたは私には勝てないわ」

 

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 シーフイの「バイロインの好きな人は誰なの」っていうところ、翻訳作業しながら、「あぁ、グーハイなら俺だよって言いそうだな、でもさすがになぁ」って思ったら案の定言っててめっちゃ笑いました。

ヤンデレグーハイVSメンヘラシーフイ

この二人に好かれるバイロインの苦労は一体…笑 

 

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楽しみにしている等言ってもらえると翻訳作業が捗ります!

一緒にグーハイとバイロインの今後を見守っていきましょう!

 

:hikaru