第137章:自分が蒔いた種
バイロインは腹ばいになった状態で柔らかくなった”ちびグーハイ”に手を伸ばして、握りながらグーハイの首筋にキスをする。
するとグーハイはすぐさま興奮を露わにする。グーハイはバイロインの弾力のある柔らかいお尻に片足を乗せて、足の裏でしばらく摩る。そして足の指をゆっくりと真ん中の溝に伸ばしていく。
ある場所に触れると反射的にバイロインの身体が震える。そしてバイロインの手の動きが止まり、うっとりとした目をして体を強張らせている。
ーークソ…やっちまった……
グーハイの心は一気に寒気を感じる。
グーハイの心に強く刻まれた後悔と自責の念。
ーーこれから一体どうすればいいんだよ…
グーハイが考え事していると、バイロインがまたグーハイの上に覆いかぶさってきた。彼のハンサムな頬をグーハイの頭の右側に傾けている。
「なぁ、またヤリたくなってきた」
バイロインの言葉を聞いたグーハイはすでに悪い予感をビンビンに感じていた。そしてグーハイの尾骨に当たってきたバイロインの悪戯っ子がまた動き始め、心臓から全身に血が一気に駆け巡る。
ーー おいおい、待て待て!一回じゃ足りないかよ!?二回目か!?
こんな残酷なお願いは、グーハイがいくら体力があるからとは言え、バイロインに何度も犯されるのは耐えられるわけがない。
「ベイビー、ちょっと休もうぜ…まだこんなに課題があるんだから体力も残さないとだろ?」
バイロインはグーハイの上に乗っかって摩りながら言う。
「あと一回だけだよ、なぁ…今度はちゃんとお前もイカせるって約束するからさ。ダーハイ…お前良いって言っただろ?」
グーハイは体を摩られていることに心の中で怒りを感じている。
ーーこいつ、普段は甘えてこないくせに…こんな時ばかり甘えてきやがって…!
グーハイがバイロインの首根っこを掴んで引っ張るとバイロインはいつもとは違った表情で目をくりくりとさせている。目の中には渇望と期待に溢れている。
こんな表情でバイロインにお願いされたのではグーハイもたまったものではなく、本来であればすぐに正気ではいられなくなり、襲い掛かるところだ。
しかし残念ながら今のグーハイはそんなことはしなかった。
グーハイは深く深呼吸をする。もうすでに一度我慢したんだ、もう一回増えても大差ないだろうと自分に言い聞かせる。愛する嫁の願いであって、これでバイロインがすっきりするのならグーハイにとっても本望である。こうなったら思いっきり身を任せようと決意する。
ーーこいつのことを愛しているのは一体誰だ?
結果、バイロインの約束は守られなかった。グーハイのことを気持ち良くさせることは一度もなく、一回もイクことができなかった。
バイロインの独壇場は一晩中かけて何度か繰り返し行われ、もう出すものも出なくなるほど行われた。
そして翌日、二人とも痛い目を見ることになった。
グーハイはトライアスロンでもこんなに疲れないだろうというほど疲れ切っており、釘を骨の隙間に打ったほうがまだマシなほどの痛みを後ろから感じている。
バイロインは一晩中やりたい放題やっていた。そして疲れ果てたらすぐそのまま寝てしまった。この機会にゆっくり休もうと思っていたが、朝早くに目を覚ますことになった。
バイロインが手洗いに行ってトイレをしようとした。すると股間が腫れていることに気がつく。触ると酷く痛み、排尿時にはそれ以上の激痛が走った。バイロインは片手で壁に寄りかかり、もう片方の手で股間を慎重に支えている。
ちくりと針を刺されているような痛みと腰に鈍い痛みを感じながら苦戦している。
なんとかトイレを済ませてベッドに横になるも状況は良くないままだ。
別に他に痛みはないし、疲労感から眠気もあるのだが、全く寝付くことができない。
昨夜の楽しい気分はどこへやら、今の彼に残っているのは大きな後悔と苦痛だけだ。
グーハイは隣でうつ伏せになりじっとしている。一見ぐっすり寝ているようにも見えるが実はずっと黙って我慢していた。
バイロインはこの間の寝たきりだった自分の状況を思い出す。酷い悪夢のような苦痛を思い出しながら、グーハイの今の姿に重ねる。自分は一回どころか四、五回もしたのだ。
グーハイの今の状況は容易に想像できる。
バイロインは落ち込み、酷く後悔する。胸が痛み、グーハイの気持ちを考える。
バイロインは手を伸ばしてグーハイに触れる。幸いにも熱は出していないようだ。
バイロインに触られたことを感じて、グーハイは目を開ける。グーハイの目は完全に疲れ切っており、昨日の彼とはまるで別人だった。
触ってすぐにグーハイが目を開けたためバイロインはグーハイが最初から起きていたのだと気づいた。
「昨日は…寝れなかったのか?」
グーハイは答える。
「どう思う?」
バイロインは自分を恥じるような表情をしている。
「すごく痛むか…?」
「そんなの答える必要あるのか?どれだけ痛いか、お前なら分かるだろ?」
バイロインは間違ったことをした子供のように、顔を歪ませ枕と枕の間に頭を埋め黙り込む。
グーハイはバイロインの酷く落ち込む姿を見て、どうしてもその姿が愛おしくなり、手を伸ばしてバイロインの頭を撫でながら慰める。
「おいおい、そんな悲しそうにするなよ。大した事ない、俺はすごく丈夫なんだぞ」
バイロインは布団に潜る。後頭部だけが外に出ていて、髪の毛が乱れてまるで鳥の巣のようになっている。まるでどちらが被害者かわからない。
グーハイが身体を動かすと鼻骨から背骨に沿って首まで全身が強く痛んだ。そしてあまりの痛さで思わず眉間に皺が寄る。なんとか痛みに耐えながらバイロインの首筋に顔をくっつける。
「お前の”前”も後ろ”も全部俺だけのものだ。痛くても別に構わねぇよ」
バイロインはそれを聞いてやっと顔を出してグーハイに顔を向けて目を真っ直ぐ見つめる。
「昨日の夜、全然気持ち良く無かったか…?」
グーハイはこの言葉を聞いて、肉体的に気持ち良くなかったのか、精神的に気分が悪かったのか、どちらの意味であるか考える。一人の男として、これは肯定すべきものであるとすぐに理解した。もしここで否定してしまえば、バイロインを下手くそと言うことになり、彼に辛い気持ちをさせてしまう。
良かったと言ってなだめたいが、もしまたこうなってしまったら、グーハイは自分の命がないと確信している。
バイロインはグーハイの答えに躊躇している様子を見て、一瞬で彼の考えていることを察した。
グーハイはバイロインのことを蔑ろにすることはできず、バイロインが落ち込んでいるとすぐ折れるのだ。
「最初は悪くなかったぞ」
バイロインは片目を出してグーハイを見る。そしてムッとしながら話す。
「今度はもっと優しくする…」
「ダメだ!」グーハイは即答する。
「次はない!今回だけだからな!!」
これに関してはグーハイの考えはハッキリと決まっており、譲ることはできない。人には向き不向きというものがあり、いくらバイロインのことが好きだからとはいえ、この苦しみを我慢することはどうしてもできない。愛の営みというものは二人が満足しなくてはならない。片一方が苦しむのならする意味がないのだ。
グーハイは自分が犯してしまったあの”愚行”を心から後悔している。これから学び続け、絶えず進歩していけばいつかバイロインも自分のことを受け入れることができると信じている。
そして、もちろんバイロインにも考えがあった。
ただ、今だけはもう考えることはやめる。昨夜の疲労からこれ以上考え事をする気にはなれず、早く体力を回復させることが肝心である。
バイロインは上体を起こして腕を近くの棚に伸ばす。そして棚の引き出しを開けて薬を取った。この薬は捨ててしまうかと思っていたが、捨てずに取っておいて正解だった。
「何してるんだ?」
グーハイはバイロインが何やらゴソゴソと動いている様子を無防備に見ている。
バイロインはバツの悪そうな顔をしている。
「これ、使えよ。あの先生がくれた薬だよ。まだ少し残ってるんだ」
「い、いらねぇよ!」
グーハイは眉尻を逆立てて、両手で自分のズボンを押さえながらぎこちない口調で言う。
「大丈夫だ!俺には必要ない!」
「なんだよ、恥ずかしいのか?俺だってあの時は我慢して塗られてただろ?お前だって近くで見てたけど、俺は別に何も言わなかっただろ。喜んでやられてたと思うか?それにそのままじゃ大変だろ…」
グーハイは依然として意地を張る。
「大丈夫!大丈夫だから!」
「いいから、ほら手をズボンから離せ!」
バイロインも引かない。
しばらくこんなやり取りをしてグーハイが一歩も譲らない姿勢でいるため、バイロインは強行突破に出る。いきなりグーハイに飛び掛かり、身体に覆いかぶさり押さえつける。そしてグーハイのズボンを一気に脱がす。こうなってしまえば薬を塗るのも容易い。グーハイの状態は自分が思っていたほどは悪くなく、腫れているだけで出血はしていなかった。しかし腫れが酷く、バイロインはできる限り優しく薬を塗る。
グーハイも観念してゆっくりと力を抜いている。グーハイはリラックス状態になり、感覚が鋭くなる。バイロインが自分に薬を塗るときに、ずっと苦しそうに息を吸っている。どうやら彼も痛がっているようだった。
もしこれがこのような恥ずかしい状況ではなく、名誉の負傷をしてバイロインがケアしてくれているのであればグーハイにとってどれほど幸せなことだろうか。バイロインが少し身体を下に移動させると、不注意で”ちびインズ”がグーハイの膝の骨に直撃して、痛みの余りバイロインは丸くなって大きな口を開ける。
グーハイはお構いなしに尋ねる。
「どうしたんだ?」
バイロインは眉間に皺を寄せて必死に手を振る。
グーハイはバイロインの異様に痛がる姿に違和感を覚え、バイロインが手で覆っている部分を見てその理由を察する。
「…ズボンを脱げ」
グーハイが命令する。
しかしバイロインは意地でも脱がない。バイロインは内心、昨晩は水を得た魚のようにあれほど無我夢中で没頭していたのに、今はこんなにも恥ずかしい思いをしなくてはいけないのかと考えていた。
「おい、何を恥ずかしがってるんだよ。俺はもうお前のモノを舐めたんだぞ?今更見られるくらいで何怖がってんだよ」
グーハイはそう言ってベッドから降りる。その瞬間、グーハイの身体に引き裂くような痛みが走り、思わず口から汚い言葉が出てくるところだった。グーハイは洗面所に行ってタオルを温水に浸し、ねじって絞る。そして寝室入り口まで戻ってきて、一度休憩する。
今のグーハイほど悲嘆に暮れている人はいない。昨夜はバイロインに振り回されて死ぬかと思った。目を覚ましたらその振り回した人の世話をしなきゃいけないなんて一体どんな罰なのだろうか。
バイロインは近くに来たグーハイの手に握られているタオルを見てグーハイがしようとしていることに気づく。びっくりしてそのままベッドから転がり落ちて、よろめきながら寝室の入り口に向かっていく。
グーハイはただでさえ体が痛くて動くのが億劫だというのにこの男はちょこまかと逃げ回っている。
「おい!こっちに戻ってこい!!」グーハイが怒鳴る。
バイロインは腰を押さえながら壁に手をかけて壁沿いにゆっくりと歩いていく。歯を食いしばって抵抗している。
「俺の手を煩わせるな!」
グーハイはベルトを手に持ちバイロインに脅しをかける。
「はやく大人しく横になるんだよ!」
しかしバイロインは言うことを聞かず、まだ必死に入り口へと向かっている。そしてドアを開ける際、力を入れすぎてしまい勢い余って体をのけ反らせる。もう少しでドアの隙間を伝って地面に滑り落ちるところだった。
グーハイはそれを見て焦ってすぐバイロインに駆け寄る。しかし動いたとたん、傷口が開いて歩くと擦れて酷く傷んだ。
バイロインの近くまで行って立ち止まる。そして息を荒げながら自嘲する。
「バイロイン、俺たちは一体何をやってるんだ?」
バイロインはそれを聞いて突然我に返り、額の汗を拭う。
グーハイは力を振り絞って身体を起こし、歯を食いしばりながら洗面所に向かう。タオルはすっかりと冷え切ってしまったため、また温水で濡らさなくてはならない羽目だ。
グーハイのそんな姿を見たバイロインはいたたまれない気持ちになり、素直にベッドに戻っていく。
タオルを再度濡らしてきたグーハイは身体の痛みに耐えながら、優しくバイロインの腫れた”ちびインズ”を拭いてあげる。そして拭き終わった後に少量の薬を塗る。その過程をバイロインは顔を背けることなくしっかりと見ていた。
全部終わるとグーハイは力いっぱいに”ちびインズ”を引っ張ってバイロインを叱りつける。
「お前な、これは自業自得だぞ」
バイロインは痛みのあまり、グーハイの髪を掴む。
バイロインがまだズボンも履いてもいないうちにそんなことをしていると、突然グーハイの携帯が鳴りだした。
グーハイが携帯を手に取り確認すると、リーシュオからの着信だった。
「ハハハ…ダーハイ、今俺たちダーハイの家の前に居るんだ。早く開けて入れてくれよ」
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ちびインズにちびグーハイ、なんか可愛いキャラクターみたいな響きですね
グーハイのこういう感じ、スパダリって言うんですかね、包容力がすごいんじゃあ
:hikaru